近頃2Bに人を招くことが増えてきた。昨日はCMSの速水さんに来てもらって、今日も編集者との飲み会の前に2Bに来てもらうことにしている。
残すところ8カ月、移転問題はいまだ進展がないが、なんとかなるだろうというのは揺るがない(笑)
昨日は新国立美術館と森美術館でやっている「サンシャワー 東南アジアの現代アート展」に行ってきた。東大の市民講座を受けているのだが、指定された展示会の中からひとつ選んで英語で短いプレゼンテーションしなければならない。サンシャワー展は、東南アジアに80年代からよく行っているので選んだ。
サンシャワーとはお天気雨のこと。晴れているのに雨が降っているという矛盾している現象が、今の東南アジアの問題点の暗喩となっている。高まる経済発展と取り残される人々の光と影がテーマだ。
1980年から東南アジア各国で現代アートが生まれ始める。それはアジアの経済発展と時期を同じくする。作品はそれぞれの地方の特色を反映しながら現在の政治的経済的問題をあぶり出す仕組みだ。
その中で一番面白かったのは、新国立美術館でやっている体験型のアートで、8x12メートルの空間に5トンもの色とりどりの毛糸を敷き詰めてある。観客はその中に入ることができる。広さもさることながら、厚みも数十センチはある。
そしてその中に本物の金のネックレスがはいっている。もし見つけることができたら、それを持って帰ることができるのだ。
見つけたらお金持ちになれるのだ。
僕もそのスペースに座り、数十センチの厚みがある毛糸の中に手を突っ込んで金のネックレスを探してみるのだが、すぐにそれは途方も無いことだと気がついて諦めてしまった。
色とりどりの毛糸は東南アジアを構成する人種の多様性のようであり、金のネックレスは冨の象徴に思える。
金のネックレスを見つけて金持ちになる。一見それは誰にでもチャンスがあることのように思える。しかし実際問題、それはないものと同じなのだ。5トンの毛糸の中の1本の金のネックレス。チャンスというにはあまりにもすくない。
毛糸の山に手を突っ込んだときの、あのなんとも言えない虚無感。面白い体験だった。
逆転不可能な社会の縮図をそこに見てしまった。富は確実にある、でも不可能に感じてしまう。東南アジアだけではなく、これはまさに日本のことだろうと思えた。