庭で採れたビワをたくさん送ってもらった、ちょっと土の匂いがする甘さだ。

11x14インチのカメラで撮影したネガをプリントしてみた。フィルム自体が大判の雑誌くらいの大きさなので、もちろんベタ焼きしかできない。

バライタ印画紙にプリントして仕上がりを見ると、11x14インチで撮ったから素晴らしいなんてことにはなっていない。言われなければ巨大なカメラで撮影しているなんて分からない。

実はプリントはちょっと拡大した方が美しいし情報量も多く得ることができる。おそらく4x5インチで撮影して11x14インチに伸ばしたほうが、11x14のベタ焼きより良い結果になるはずだ。

とはいえベタ焼きにはベタ焼きの面白さがあって、ゆえにわざわざコストがかかって面倒臭いことをしている。こと写真に限って言えば面倒臭いことは利点が多い。

効率を考え始めると「写真なんて、そんなことやらないほうがいい。そんなもの撮ってどうするんだ」という結論になってしまうだろう。限りなく非生産的なわけだし。

大きなカメラで撮るというのはとても面倒臭い。面倒臭いということは、やらなければならないことがたくさんあるということで、これはとてもとてもありがたいことなのだ。

「何を撮っていいかわからない」ということを言う人がいるけれど、僕はまったくそうならない。ただ目の前のものを撮れば、あとはやるべきことがたくさん出てきてそれを粛々と行えばいいからだ。

その結果のプリント一枚一枚にあんまり意味がなくても別にかまわない。何かを成すために撮るというより、自分にとってもっとも切実だなと思うものを撮るだけ。それが今は2Bだったわけで、時代が変われば切実だなと思うものが変わるだろうからそれを撮るだろう。これは昔から変わっていないし、多くの写真家もそうだろうと思う。

やることが多い暗室作業は、自分にはとてもありがたいのだ。