特装本の束見本が上がってきた。
束見本とは印刷をする前に、使用する用紙を使い、サイズや質感をチェックするためのものだ。
結論からいうと大失敗。表紙表面のテクスチャを大事にしたいため、わざわざ布クロスの裏側を表にして貼ってもらったのだが、期待していたような効果が出ていなかった。
裏地を表にすることで糊付けが困難になり、費用も跳ね上がる。なのにこの程度ではわざわざ苦労して使う理由が見つけられない。しかも経年劣化で剥がれる可能性もある。
急遽高橋社長から呼び出しがあり、デザイナーを交えて緊急会議。いったい何度目の打ち合わせだろうな。
3人とも渋い顔。デザインを一から見直した結果、普及版はソフトカバーに戻すことにした。特装版はハードカバーで箔押し、印刷した写真を貼りこむまでは前回と同じ。
箱をつけたらどうだとか、特殊なデザインのクロスがいいんじゃないかとか1時間以上悩むが決定打は出ない。特装版なのだからインパクトがないと。少々焦りが出てきた。
会議室の壁面が本棚にあっていて、そこから本を引っ張り出してイメージを探っていたときに、僕が15年前に出した最初の写真集「午後の最後の日射(ごごのさいごのひざし)」が 目に入った。知人の装丁師に特装版を3冊だけ作ってもらい、社長にプレゼントしたものだった。
茶色のクロス貼りのその本は、15年たってもまったく色褪せることなく存在感を見せていた。ここでなぜ特装版を作るのかという根本的なことに気がついた。 目立つためではなくて、ずっと 長く見てもらいためなのだ。
その後は展開が早かった。特装版の表紙は肌理が細かい布製、黒、箔押しという極めてオーソドックスなものにした。そういえばシュタイデルの本もオーソドックスだ。
打ち合わせはこれで最後。本当に最後。11月の17日と18日が印刷日。
打ち合わせ終了後、社長とふたりで近くの焼き鳥屋へ。おつかれさまでした。