川村記念美術館の生パスタはおいしい。


川村記念美術館へ。近現代のアートを収蔵している日本屈指の美術館だ。
http://kawamura-museum.dic.co.jp

以前は写真を見るのは好きだったが、現代アートにはさほど興味がなかった。ところが数年前から美術史に目覚め、知識量が増えるとともに現代アートが俄然面白く見えてきた。

川村記念美術館印象派から戦後アメリカ抽象美術まで体系的に網羅されている。

美術館の存在はなんとなく知っていたが、千葉県にあることから行ったことはなかった。

関係者に「今回の特別展はサイ.トォンブリーの写真展ですから」と招待券をいただいた。サイ.トォンブリーは1950年台から活躍するアメリカ抽象絵画第二世代の作家だ。その辺の時代が気になるので行ってみることにした。

最寄駅は千葉県佐倉だが、東京駅八重洲口北口から毎朝9:55に直行バスが出ている。およそ1時間で着くことができた。東京駅への帰りのバスは15:30。館内と庭園を見て食事をするとちょうどいい時間になる。

まず敷地に入って驚くにはその庭園の広さ。白鳥がいる大きな池を取り囲むように広がっている。そして館内に入るとピサロ、モネ、ルノワール印象派が並びピカソ、ブラック、レジェのキュビズムが続く。奥にはレンブラントが飾ってあるのだが、これが教科書レベルの有名作。その後も歴史をなぞるように超有名どころがずらりと並ぶ。

圧巻はアメリカ戦後抽象絵画の巨匠ロスコーの部屋。7枚の超大型作品に取り囲まれる作りになっている。圧倒されながらも頭の隅で「これ全部でいくらだよ?」

普通に考えたら10億20億じゃ絶対無理。100億でも安いと言われるだろう。

川村記念美術館は誰が作ったのか?カメラマンやデザイナー、編集者なら必ずお世話になる「DICカラー」という色見本帳がある。これは川村インキのものなのだが、美術館その川村インキ二代目創業者が20年前に作ったものなのだ。

展示物を見ているとわかるが、おそらくアメリカ現代アートがきっかけで収集が始まり、そこからそれを体系的につなげるために遡るようにレンブラントまで集めたという感じがする。

特にステラはお気に入りのようで、かなりの点数と入口にも巨大オブジェが屋外展示してある。

いままで見てきた美術館の中でも相当面白い。近現代に絞ってあるからかもしれない。絵画が通ってきた歴史と変遷がよくわかる。アートが次第に美から離れていく歴史とも言える。

ちなみに個人的なツボはマン.レイとマレービッチ。それと小さかったけどポロック

特別展のサイ.トォンブリーの作品で面白かったのが、ドローイングでは感情的な部分を排除して作ろうとしているのが見えるのに、写真になると途端にセンチメンタルになり、ノスタルジーが出てくること。

本人もコメントで年齢とノスタルジーの関係性に触れていて興味深い。戦後抽象絵画が辿ったのは対象やテーマの解体なのに、その中心人物のひとりであるトォンブリーが写真を使った作品ではノスタルジーに言及している。どうやら写真とノスタルジーは相性がいいようだ。

レストランのパスタもおいしくて、かなり充実した時間が過ごせる美術館だ。