近頃量販店からRCタイプの六つ切り印画紙が姿を消している。理由はわからない。
通常ワークショップで使っているのはケントメアというイギリスのメーカーのものだ。理由は安くて使いやすいから。
一回の講座で150枚近くを使うので年間の消費量は半端ではない。ワークショップを始めたばかりの頃はイルフォードの印画紙を使っていた。理由は安かったから。
それが徐々に値段が高くなってきたのでオリエンタルに変えたのだが、それも昨年高騰したのでケントメアになった。
10年前のイルフォードはたしか100枚入りで3600円だったような。今は9000円近くする。オリエンタルも同じくらい。そしてケントメアは5000円。ケントメアを使いたくなるのも分かってもらえるだろう。
そのケントメアが手に入らない。オリエンタルもない。イルフォードの光沢紙もない。六つ切りRCはほぼ全滅。入荷は早くて3月末。
しょうがないのでイルフォードの半光沢紙を購入。2箱買うとケントメアとの差は大きい。ちょっとつらい。
長年常用している35ミリの富士フィルムのカラーネガフィルムPRO400も生産終了が決定し海外向けの400Hに統合される。
フィルムを使って写真を撮ることはこれからどんどん大変になってくる。
そんな状況でもシノゴ(4×5インチ)やバイテン(8×10インチ)の大型カメラを使う人が増えているそうだ。デジタルカメラの画素が上がり、すでに大型カメラ並みの画質と言われて久しいが画素以上のものがあるから使うわけだ。
僕はそれを「足を止める」ことだと考えている。目的地まで機材を運んでセットアップし、三脚を据えて対象物を見る。切り取るという意識は失せ、対象を受け入れる気持ちが出てくる。
カメラにフィルムを装填してしまうと、もはやファインダーを覗くことはできない。我々はカメラの横に立つ傍観者となる。シャッターチャンスとか意味がない気がしてくる
世の中のカメラが軽くて使いやすくて高性能を謳うのに逆行するような、重くて使いづらいものをなぜつかおうとするのか。二つの写真展を見てきた。
谷 雄治写真展「Tokyo8x10」ギャラリーEM
2月26(火)〜 2013年3月9日(土)12:00〜18:00
http://www.takeuchi-studio.jp/gallery_em/
酒巻 澄江 写真展 「杜に生きる」新宿エプサイト
2月22日(金)〜2013年3月7日(木) 10:30〜18:00(最終日は15:00まで)
http://www.epson.jp/katsuyou/photo/taiken/epsite/event/gallery2/13/
都市と屋久島。いずれもモノクロだった。まっすぐに対象を見るのには大型カメラはむしろ使いやすい。
僕が10年間シノゴのカメラを使い続けたのは使いやすいからだった。おそらく二人にしても使いやすいから使っているんだろう。
そしてなにより大型カメラで捉えられた世界は美しい。これだけは間違いない。それだけでも使う価値がある。
すごい、すごいと唸りながら見てしまったふたつの写真展だった。