空港で買ったお土産はチーズケーキ、ロイスのチョコレート、西山のラーメン、大泉洋のスープカレー。

しばらく日記を書いていなかった。

何度か書きかけたのだが下書きのままにしてしまった。facebookのようなものならリアルタイムでどんどん行けるのだろうが、ブログとなると気持ち的にワンクッションある。

でもスピード感の無い僕には、SNSよりこっちとのほうがしっくりくる。


今週は北海道に行ってきた。道東に30年間通い続けている友人のカメラマンに連れて行ってもらったのだ。女満別空港で落ち合ってレンタカーで釧路近くの「鶴居」という場所へ向かった。

鶴居とは読んで字のごとく、鶴の居る村だ。そこで長年丹頂鶴を撮り続けている和田正宏さんのホテル「タイト」に宿泊した。

和田さんは自然写真家として著名な方で世界的な評価が高い。そしてその宿には、故星野道夫さんを始め数多くの写真家が集まる場所にもなっている。どんな宿なのかは折に触れて聞いていたので僕もそこに泊まってみたいとずっと思っていた。http://www.hotel-taito.co.jp/blog/

和田さんとは7年前に友人の紹介で東京で一度お会いしただけだったのだが、今回念願の宿に泊まることができた。夕食後は和田さんを囲んでの団欒となった。連れて行ってくれた友人は高校時代から和田さんの写真と人柄に魅かれて毎年シーズンごとに通っているそうだ。

ホテルには丹頂鶴を撮影しに観光客が集まってくる。中国、アメリカ、ヨーロッパ、世界中から鶴を見にやってくるのだ。そしてその機材はプロ並みというか、プロ以上。鶴がいるポイントには70万円もするカメラに、400ミリ、600ミリよいう100万円以上のレンズがずらりと並ぶ。鶴というのはそれほど魅力的なようだ。

朝5時には、宿の駐車場に車は一台も泊まっていない。全員、朝のショットを狙うために夜明け前から出発するのだ。有名な橋の上には暗いうちから場所どりの三脚が並ぶ。

さて、僕はと言えば買ったばかりのEOS5DMark3は家に置いてきて、ローライフレックスにモノクロフィルム25本だけを持ってきた。例によってカバンに詰めた機材を出発の朝に入れ替えたのだ。最初は5DMark3がメインだったのだが。

ということで80ミリの標準レンズじゃ鶴は見えない。なので混んでいるポイントに行く必要もない。

川沿いに車を走らせている途中で夜明けになった。太陽が出た瞬間に気温が上昇し、一瞬で霧氷が木々に張り付いた。真っ白な世界。初めて見る光景だった。同じ雪でも本州とはまったく違う透明度のある色だ。

「今日は暖かいですよ」と言われて「何度なの?」と聞いたらマイナス18度。マイナス20度を下回ると寒いと言うらしい。

不思議なことにマイナス1度だと、もはや暖かいと感じる。東京の寒さと質がまったく違う。東京のほうが寒いんじゃないかと思うくらいだ。

撮影から戻り朝ご飯を食べるとすぐに根室に向かった。オホーツクの海には流氷がびっしり。どこからが陸でどこからが海かまったくわからない。今年は多いそうだ。

岸壁のテトラポッドが氷で覆われて真っ白に光っていてきれいだ。日射しを浴びた番小屋のトタンに思わず魅かれてしまうのはモノクロフィルムを詰めているから。

毎日朝から晩まで撮影を続けた。いつもはあんまり撮らない僕もフィルムの消費量がついつい多くなる。最終日は朝3時前に起きて羅臼から出ている船に乗って海から流氷を見ることにした。

乗船の時に「カメラは何をお持ちですか?一眼レフなら乗船料1万円です」と言われた。ローライを見せたら「ああ、それなら7000円です」。

コンパクトカメラと同じ料金だった(笑)

船酔いするかなと思っていたのだが、波はまったくなかった。夜明けとともに流氷が青く光る。5DMark3を持って来ればよかったかなとちょっとだけ後悔。ローライじゃ写らない。

流氷が島になっているポイントにつくとガイドの人が魚を放り投げた。カモメや海鳥の向こうに大鷲が見える。船に乗っている人はそれが目当てなのだ。大鷲が舞うとカメラのシャッター音が船上に響く。三脚に据えられた600ミリを覗きこむこと4時間。全員休憩もとらずずっと甲板に立っていた。

ガイドが僕に「そこ!来るよ」と鷲の飛行軌道を教えてくれるのだが、ローライを構えている僕はそれをただ見ていた。だって豆粒ほどにも写らないから。ガイドさんの顔はあきらかに「あんた何しに来たの?」と言っていた。

雪が強くなり羅臼港に戻ってきた。僕にとっては雪に包まれた港の様子のほうが大鷲よりずっと魅力的に見えた。

3泊4日で撮影した本数はトライX23本。僕にとっては記録的な本数となった。