インドネシア2012 その2 マジックマッサージ

3日目 曇り時々晴れ

足の痛みで何もできそうにない。といってこのまま町外れの宿にいても気が滅入るだけなので、昨日ビーチに行く途中に見つけたリゾートホテルに宿を移すことにした。

そこならwifiも入るだろうし、少なくともここよりも気分的にましな気がする。

迎えの車に乗り込むにも一苦労だ。一動作ごとにうめき声が出る。ドライバーが心配そうに覗きこみ「どうしたの?」。

「昨日足をひねってしまって歩けない」というと「じゃあササックマジックマッサージがいい」と言う。マジックマッサージ???

この辺りは元々ササック族という人たちの村で、今でも昔ながらの生活をしている集落もある。以前そこに泊めてもらったことがあるが、そのときは電気も水道もない生活をしていた。当然病院などないので、この辺の人たちは何かあるとマッサージで治すというのだ。

「僕も果物を取ろうとして木から落ちて手の骨を折ったけどすぐに治ったよ」と真顔で言う。ホテルのレセプションでも足が痛いから1階の部屋にしてくれと頼んだら「すぐにササックマッサージに行ったほうがいい。僕の弟もバイクで転んで足を2か所折ったけど治療後は歩いて帰ってきた。マジックなんだ」。

足折って歩けるなんてありえない、、、

でも藁をもすがる気持ちでマジックマッサージに連れて行ってもらうことにした。痛みはともかく動かせるようにならないとずっとホテルに引きこもることになる。

ホテルから車で30分、空港の使くの町にその治療院はある。とはいえ看板があるわけでもなく、ごく普通の民家。というより「ここ、入って大丈夫?」」というレベル。

現れたマスターはどことなく雰囲気を待った人だった。心が弱っているからそう見えただけかもしれないが。促されて部屋に入るとマットレスが無造作にしいてある。そこへ横になると、マスターは液体を入れたグラスを持ってきた。

彼は静かに目をつぶり、左手の掌にグラスを置くと右手でそれをかざすような動作を始めた。気か?気を込めているのか?そしてそれを僕に飲めという。飲んでみるとただの湯ざまし。飲み干すと治療が始まった。

マスターは英語を話せないのでドライバーに通訳に入ってもらう。事情を説明するとマスターは足首を持って左右に動かし、膝の裏を何やらまさぐる。そしてお尻の裏側を強く揉みしだいた。

次第に動きは激しくなり、痛いほうの左足をつかむと大きく持ち上げグリングリン回し始めた。

痛いなんてもんじゃない。悶絶だ。うなり声じゃなくて叫び声が出る。一旦外に出ていたドライバーも何事かと部屋に飛び込んできた。そしてマスターと言葉を交わすと僕に向かって一言「リラ〜ックス」。

涙目になりながら、なるだけ体の力を抜こうとは試みるが本能がそれを拒否する。施術はおよそ30分ほどだった気がする。終わって立ち上がるとマスターは歩いてみろという。

おそるおそる動かすと、なんと足を引きずらなくても歩けるではないか。思わずマスターに向かって「I can walk!」 するとマスターはにっこりと親指を立てた。

そしてスクワットをしろという。無理無理と首を振ったが、両脇を抱えられて屈伸を促される。体を沈みこませるとあるポイントで激痛が走るが、そこを外すと痛くない。

マスターは常に足を動かしなさいと言う。日本で捻挫をしたら「絶対安静」が基本だが、ここでは動かして治すのが当たり前のようだ。

このあたりで動けないということは、即お金を稼げないということに直結するからかもしれない。

とにかく歩けるようになった。施術前と後では可動範囲がかなり広くなった。

代金はいくらかとドライバーに聞いてもらうと「up to you」。つまりお気持ち次第ということだ。僕は封筒に2千円弱をいれてマスター渡した。

その後1日おいてもう一回マッサージを受けた。それでほとんど問題なく動けるようになってしまった。まさにマジック!

もしかするとマッサージを受けなくても治ったのかな?と思わないでもないが、これまでの経験上あの痛みは2日や3日で歩けるようなものではない。

あれはマジックだったんだと思う。