久しぶりに雑誌『東京人』の特集撮影で東京の「塔」を撮っていた。
中沢新一氏のインタビューで「塔には二種ある。上へ上へ伸びるバベルの塔型と、古代からある女性の子宮を現した螺旋の形を持つものだ」という話が面白かった。
ひねりを加えられているというのは産道を表現していることなのだそうだ。
まだ工事中のスカイツリーの足元まで行って撮影。ここは以前、足場もない頃に「予定地」として撮影したことがある。
下から見上げると意外と高さは感じない。比べるものがないせいだ。根元も見える仕組みになっている。溶接のあとの膨らみが生っぽい。
その後浅草寺に行って境内とスカイツリーの組み合わせを撮る。あそこにある五重塔は螺旋型塔と言えるのだそうだ。確かに言われてみれば。
撮影後茅場町の盛岡書店に立ち寄る。
江本典隆 写真展 「ロマンスカー」
会期 3月5日(月)ー3月10日(土)
ここは先週も来たが写真を見るには雰囲気が良すぎる(笑)
写真を見ながら視線がよそに動いてしまう。
写真集のコーナーに隠れるようにiPadが置いてあり、作者の作品をスライドショーで流していた。思わず立ち止まって見入る。
夜、四谷のポートレートギャラリーでオープニングパーティー。
復興願う二人の写真家 菊地信平・鈴木麻弓二人展
3月8日(木)〜3月14日(水)
鈴木は『旅するカメラ』のヴィトンライカのアシSだ。この一年に彼女に降りかかった出来事は数十年分に相当する。それが一冊の本にまとまった。
女川 佐々木写真館 2011年3月11日
鈴木 麻弓 著
一葉社
手にとったら何か馴染みのある大きさだ。家に帰って比べてみたら僕の最初の写真集『午後の最後の日射』とサイズがまったく同じ。しかも開き方も一緒。
そういえば彼女がアシスタントをしている時に写真集が出た。判型は出版社が決めるだろうから偶然なんだろうが。
パーティーでは彼女はたくさんの人に囲まれていた。元アシスタントの写真展ほど落ち着かないものはない。彼女は復興を目指す人々のポートレートを撮っていた。
一緒に展示している菊池さんの写真はすごい。どこがすごいかというと津波がアイレベルで撮られているのだ。押し寄せる津波に住民が何事かと呆然と見ている。
報道は俯瞰によって情報量をたくさん入れようとする。でもアイレベルの強さにはかなわない。
見ていて鼻の奥がツンとしてきて涙が滲んできた。たくさんの被災地の写真を見てきたがこんなことは初めてだった。
写真展で出版記念でもあるのに「おめでとう」と素直に喜んであげられなかった。
彼女の父親はいつも「チャンスは必ずものにしろ」と言っていたそうだ。間違いなくそのチャンスはつかむことができた。たいしたもんだ。
出版おめでとう。いい本だよ。