荷物の中にはカレーヌードルとぺヤングを入れておく。

今回のネパールは12日間。冬なので持っていくものが多い。

フリースやダウンジャケットなどかさばるものばかりだ。いつものスポーツバックに収まることは収まったがはちきれんばかりで荷物の出し入れがしづらい。

一か所に逗留するなら問題ないが、1泊づつ移動するので毎日の荷造りが大変になる。そこで20年来使い続けているスーツケースにパッキングすることにした。

これはもともとスキー用に買ったもので、素材はナイロン地を編み込んだソフトタイプ。容量の融通がきくため使いやすい。ちゃんと車輪もついていて転がすこともできる。移動は飛行機と車なので今回はこれで行くことにした。

カメラはデジタルだけにして、フィルムは無し。これでX線の心配から解放される。手荷物なら100パーセント大丈夫だと信じていたが、近頃手荷物で通したのにX線かぶりが出たという事例を複数聞いている。

アメリカ旅行から戻った人が不注意でフィルムを機内預入荷物に入れたままにしてしまった。帰国後現像したフィルムは見事にかぶっていた。ところどころ縞状のムラになっているところもある。


X線に影響を受けたフィルムというのは、全体にグレーにかぶったようなネガになり、コントラストが極端に低くなる。いくらプリントでコントラストをつけても、うまくプリントできない。

ところが、そのX線かぶったネガをスキャナーに取り込んでみると、驚くような画像が得られることが分かった。

見事な粒子の荒れっぷりなのだ。ザラザラの砂をまぶしたような粒子。

今のフィルムと現像液では感度を3200にあげたところで大した荒れにはならない。1970年代の粒子の荒れ方は、現在のフィルムでは作れないのだ。かといってフォトショップでただノイズを加えるのも、どこか平坦的で味気ない擬似的な「ノイズ感」。

ところがX線かぶりのネガから生まれたざらつきは、銀粒子のそれなのだ。しかもハイライト部にも、シャドー部にも粒子のざらつきが見える。これは見たことのない美しさになる。

この写真は以前ワークショップのグループ展で展示したのだが、誰もX線かぶりだとは気が付かず、どうやったらこの粒子になるのかと質問が相次いだ。

手荷物じゃなくて、預入荷物にするだけで見事なザラザラ写真が生まれる。もちろん必ずそうなるという保証はどこにもない。どこに縞状のムラが出るのかもわからない。でもうまくいったらかなり面白い。

荷物の中にフィルムを数本入れておこうかと考えている。先にかぶらせておいて、後で撮影するのだ。うまくいったらニュービジネスになるかも(笑)