午前中、宅配便が届いた。「旅するカメラ4」の刷り見本だ。

箱をあけて取り出すと、オレンジの帯がまぶしい。そこには大きく「写真の話、しようよ」とある。

実はこの本を出そうと思ったのが昨年の今頃。本当は、本当はというのもおかしいが勝手な予定では今日9月1日から僕はニューヨークに住んでいることになっていた。

そのニューヨーク資金のひとつとして、そして区切りの意味合いもかねて「旅するカメラ」の4冊目を出そうと思ったのだ。

ところが奨学金審査の結果はご存じのようにあえなく落選。

一度は出版する意味合いをなくしてしまったのだが、震災の後の悶々とした日々の中、無性に写真の話をしたくなった。というよりそれしか出来ないことに気がついた。

それまで編集部に提出していたものを一度全て引き上げて全て最初から書き直した。半分近くを差し替えて、最後の最後まで、締め切りのギリギリまで書き続けた。

「旅するカメラ」の1巻目はwebに載せたものをそのまま転載し、写真も焼いてあるものから選び、唯一やったのはカメラのブツ撮りで、それさえ仕事でスタジオを使ったときに合間に撮ったものだ。

本を出すのって楽勝って思っていた。

ところが2、3と続編が続くと徐々に大変さを増し、今回は半年間かかりきりになってしまった。

今でも1を読み返すと写真と文章のバランスがいいと感じる。2、3になるとモノクロからカラーになり、写真も大きくなった分だけ文章が目立たなくなってしまった気がする。

編集部からは文庫サイズの倍のA5判で出版することを勧められたが、あの版形は写真を見るのにはいいが文章は記憶に、残りづらい。今回は「写真の話」をすることが目的だったから無理をきいてもらってあえて文庫にこだわった。

写真のサイズや紙の色は1を基本にしている。文章の読みやすさを重視した。そして1話分の分量は地下鉄2駅から3駅分で読み切れるくらい。短編を数多く収録することにした。

この本は写真が好きな人のための本だから、書店だけじゃなくカメラ屋さんにも置いてもらいたい。書店でもカメラ屋さんでも全国どこでも呼んでいただけるのなら伺います。

今までは「読んでもらえたらうれしい」だったが今回ばかりは「読んで欲しい」と心から思っている。