月曜日の午前6時に東京を車で出発。青森へ。
途中仙台南で高速を降りて海岸線を通り宮古から女川へ。
元アシスタントのSと現地で落ち合う。
http://monchiblog.exblog.jp/
風が強い。砂埃で前が見えない。
Sは「ようこそ佐々木写真館へ」と海のほうを指差した。
そこには何もない。「どこ?どこ?」と言うと「そこ、壁に旗がたってるでしょ」
たしかに壁に囲まれた小さな空間が見えた。
中を覗くと大型の引き伸ばし機が引っかかるように傾いて残っていた。
その中は暗室だった。
本当に港のすぐそばだ。目の前が海。
ところが「本当は海は100メートル先だったんです。地盤が1メートル沈んでしまったから満潮になるとこの辺まで潮が来てしまって」
しばらくすると足元まで水が迫ってきた。
佐々木写真館の隣のビルが何か変な形になっている。
裏に回ってみて背筋が寒くなった。側面だと思っていたところは基礎の部分だ。4階建ての大型ビルが完全に横倒しになっていた。
Sの両親はまだ見つかっていない。
遺された写真を洗うのを手伝ったり、写真をスキャンするのを手伝ったりしていたが、全然実感がわかない。
テレビを見ても遠い国のこととしか思えない。リアリティが欠如している自分がいる。
でもこれは日本なのだ。いつも牡蠣やカツオを送ってもらっていた女川の話なのだ。
僕は佐々木写真館を見に行こうと思った。
ボランティアでもない僕が行くのは抵抗があったが、とにかく見にいくべきだと感じた。
海岸線から5分ほどにある病院裏の高台の神社まで登ってみた。
湾の向こうには真っ青な海と空が見えた。美しいところだ。
でも目を下に向けるとそこには何もない。本当に何も残っていない。
女川にいたのはわずか1時間だった。
帰り道、宮古の道路は冠水していた。玄関先に呆然と立つ老人がいた。家の前は水で覆われ、外に出るのは不可能なように見える。女川と違って密集している分だけ整理が進んでいない。壊れているのか壊れていないのかの境が分からない。
こんなことを言ってしまっていいのか分からないが、できるのなら、見にいったほうがいいと思う。特に若い人は。
ボランティアでなくてもいいから、興味本位でもいいから。
とにかく見て、体で感じないとこれは理解できないはずだ。
まずはそれからだ。