アシスタントと話をしていて、ポジフィルムの現像出しの話題になった。彼の代になってからポジフィルムを現像に出したことがない。
感度100のフィルムの場合、フジのポラロイドFP100で撮影して、その結果が良かった場合そのままの値でフィルム撮影すると、仕上がりは半絞りくらいアンダーになる。だからポラと同じ濃度にするならフィルム現像のときにプラス2分の1の増感をしてもらわなくてはならない。
同一条件で複数本撮影した場合、その中の1本を最初に現像する。これをテスト現像と呼んでいた、その結果を見て本番現像の指示を出す。大抵の場合、ポラの露出どおりに撮影し、テスト現像はプラス2分の1で出すことが多かった。
なぜテストで増感現像するのかといえば、万が一オーバー目に現像されていたら、残りのロールは標準現像してもらえばいい。まだ濃度が足りないと思え1絞りの増感をする。
現像はプラス側に1段分まで増感しても大丈夫。だが減感はコントラストが低下し、色が濁ってくるので、かなり特殊な事情以外では行わない。
肌色を出すのに、プラス2分の1で出すか、プラス3分の2にするか現像所のライトテーブルの前で延々と悩む。その差はわずか6分の1絞りの差でしかないのに(笑)
ロールフィルムの場合、そのフィルムの一部だけを現像してもらうこともできる。「切り現」といわれるもので、35ミリフィルムなら6コマ分、ブローニーなら2コマ分くらいをテスト現像し、残りをとっておいてもらう。
その点シノゴはシートフィルムなので便利。1枚づつ現像に出せるので、1カットを2枚づつ撮影して、片方だけを最初に現像し、現像結果を見て残りのシートの現像指示を出すことができた。
なんでこんな話になったかというと先週見にいった台湾の写真家沈昭良写真展「STAGE」がシノゴのポジで撮られていたからだ。
夕暮れ時に撮られていてチャンスは一瞬しかない。手順の多いシノゴで撮影できる枚数はごくわずかだ。
それでアシIが「ポジは露出を一発で決めなくてはならないのか?」と質問してきたのだ。それは半分正解で、半分外れ。現像時のフィルムの増感性能を利用すると一絞りくらいの幅は調整できるわけだ。
沈さんに「なんでデジタルじゃなかったの?」と聞いたら「だって全然ポジのほうがきれいですよ」だって。たしかにあのシリーズはポジ以外は考えづらい仕上がりだったな。