長いようであっというまの7月でした

「da.gasita2009」本日無事終了。

29枚の写真が売れて、終了後その場で清算してもらう。ほっとすると同時に自分の写真に対して支払われた対価の重みに恐くなる。

今までの写真展は、長い時間をかけてまとめた写真をどう発表するかを考えてきた。

でも今回は期日が決まっていて、それに合わせた撮り下ろし作品を展示することになった。初めての経験だ。

写真は坦々と並べた。何の起伏もドラマもない。全てを等価にしたいと考えていた。

だから展示直後は胃が痛かった。インパクトにかけるのではないか。自分のやっていることは間違っているんじゃないか。

その疑念は一月の展示期間が解決してくれた。

坦々と同じ写真をと言っているのに数枚「引きが強い」と自分で思っていた写真を混ぜていた。でもそれは結局1枚も売れなかった。

売れないからダメな写真というわけではないが、何か見透かされた気がした。

買ってくれる人は真剣だ。自分のお金を投入するわけだから。何度も何度も会場を回って本当に気にいったものを見つけようとする。そこには真実が隠されている。

売れるようには撮るのは自分には無理だ。今回の写真展でよく分かった。

今回の写真展では色んな質問が出た。今までで一番多かったと思う。それに対してひとつひとつ答えていく。すると考えが徐々にまとまってくる。

「電車の座席はなぜ2枚並んでいるんですか」という質問が一番多かった。見る人が考えるきっかけになればいいと思って並べていたこともあって予想通りではあった。

今回の写真では、どの写真にも決定的瞬間は存在しない。明日でもいいし一週間後でも撮りにいけるような風景ばかりだ。

でも同じ瞬間は二度と存在しない。たった数秒のフィルムを巻き上げる時間の流れがあの2枚の座席の写真を作っている。

1枚は硬質で1枚は柔らかく、同じ座席だとは思えないほど表情を変えている。全ての写真にいえるのは、瞬間は2度と訪れないということ。同じ風景など存在しない。僕はその意識を持って写真を撮りセレクトしている。

休む間もなく8月はプリントをしなくては。写真を買ってもらうのは千の褒め言葉より重い。その重さを感じてプリントを作る。