江ノ島の名物はシラスだった。

妻は陶芸を趣味としている。まだ初めて1年くらいだ。周りは「いい趣味ですね」と言う。

でも家族は大変だ。ただでさえ狭い食器棚が得体のしれないもので占領される。でもこれに関して決して文句は言ってはならない。それは全て自分に返ってくるからである。たとえ飲みづらい湯飲み茶碗も、使っているうちに愛着もわいてくるものだ。

陶芸を教えてもらっている先生が茅ヶ崎のギャラリーで個展をやっているというので見に行った。今自宅で使っている食器は先生の作品が多い。信楽の土を使った食器は見た目も持った感じも柔らかくて気持ちがいい。

展示してあった作品の中で花瓶がとても気にいったので購入。事務所に置いて花を生けたい。

先生と話していて印象深い言葉があった。陶芸をするときに、最初に土をこねなければならない。それを「菊練り」と呼ぶ。基本中の基本だ。

ずっと当たり前にやってきた菊練りなのに、陶芸を始めて10年たったある日、突然「今、菊練りをしている!」という感覚に目覚めたそうだ。今までの形だけの菊練りではなくて、土からきちんと空気が抜けていく感覚が実感できたというのだ。

同じような経験が自分にもある。プリントを始めて15年たったある日、突然プリントが理解できた。徐々にでなくて突然。ああ、これがプリントなんだ、と分かった。

学生時代、どうしても理解できなかった同級生のプリントが15年たって分かった。分かって嬉しいというより悔しかった。あいつら学生時代に分かっていたんだと思うと呆然となった。

茅ヶ崎から江ノ島へ。曇り空の海はきれいだった。展望台からベッサで撮影。屋上はガラスがはいっていないので、撮影ポイントとしていい。

シラス丼を食べて江ノ島水族館へ。イルカショーを見る。面白いではないか。平日だと言うのに結構混んでいる。近隣の水族館の中では一番好きだ。

東京に戻って水中写真家楠哲也の出版記念パーティへ。タイの海の写真集だ。

初めての出版、彼は嬉しそうだった。彼を祝福する、おめでたい感じが会場から伝わってきていい感じだった。