新聞社時代の後輩から定年で退職された当時の写真部スタッフふたりの訃報が届いた。ひとりは72歳、もうひとりは65歳で亡くなったということだった。
僕が新聞社に入社したのが25年前だから、当時Fさんは47歳とTさんは40歳ということになる。来年僕は47歳になる。あの頃のFさんと同じ年でTさんよりずっと年をとっているわけだ。
今思うとふたりは随分大人に見えていた。40歳のTさんは写真部の中心として大舞台の撮影を担当していてまぶしかった。Fさんは大ベテランの様相で「遊軍」という立ち位置だった。デスク経験もありなんでも知っていてなんでも撮れる。
ふたりは新人で要領が悪く、失敗ばかりでデスクや部長に怒られ続けていた僕をなだめてくれた。「いいんだよ失敗は。部長だってデスクだって昔はたいしたことはなかったんだから。ナベちゃんは頑張っているよ」
今思えば一生懸命やっているつもりなのに方向違いなことばかりしていたような気がする。そしてすぐに「これだけやっているんだから、このくらいはいいか」と自分に甘えていた。
今カメラマンとしてやってけているベースは間違いなく新聞社で養われている。どんな場所でも、どんな状況でもなんとかできるのは、その頃の訓練のおかげだ。
昨日忘年会の場所に行くときに新聞社の近くを通った。「ここのあたりにくるとPTSDをおこすんだよね」と冗談を言っていたが、今でも本当に緊張するのだ。
育ててもらった礼もきちんと言わずに新聞社を辞めてしまった。今はおふたりのご冥福を祈るだけだ。