銀座ニコンサロンで鬼海 弘雄展[東京夢譚]をやっている。トークショーの案内を鬼海さんからいただいていたので聞きにいくことにした。
トークショーは、インド、ペルソナ、東京迷路の写真数百枚をスライド上映しながら鬼海弘雄の写真論を語っていく。
鬼海さんは写真家だが言葉の人でもある。時々ドキッとするような言葉が飛び出す。「瞬間にはふたつある。時間をフリーズさせるものと、止まった時間が動きだすものだ」
東京都写真美術館では2階スペースで鈴木理策「熊野、雪、桜」をやっている。これまで単独開催された中で最年少ではないだろうか。
同世代として一番気になる存在であり、彼の作品はこれまでずっと見てきた。
彼の展示の特徴は、全体的に暗い部屋の中にマスキングライトを使って、写真だけ浮かびあがるようにしてあることだ。展示サイズは巨大であり、大型カメラを使って得られる情報は濃密で、写真的な粒子というものはまったく感じられない。
その効果は、部屋の中から窓を通してリアルな風景を見ている気にさせる。あたかもその場にいるような錯覚を起こさせるのだ。
鈴木理策はロードムービー的な写真集を主に製作する作家だったのだが、近頃は展示に力を入れている。
今回の展示は… こんなことをやれる作家は日本には彼しかいないだろうな。
地下の「キュレーターズ・チョイス」3階の「昭和」も面白かった。見るのなら鈴木理策は一番最後がいい。
そのまま御茶ノ水へ出てギャラリーバウハウス田村章英展「BASE」を見に行く。
田村さんの作品は東京都写真美術館でも見ることができた。
「BASE」は1970年代に発表されたもので、今回のプリントは2007年に焼かれたニュープリントということだ。写真集では見ていたが、プリントをまとめて見るのは初めて。
以前僕はオリジナルの「BASE」のプリントを1点だけ見たことがある。薄手のバライタ光沢紙にフェロ板仕上げをしていてピカピカに光っていた。
今回見た中にそのとき見たものと同じものがあったのを見つけた。
「BASE]もよかったが、黒澤明監督の写真が痺れた。黒澤作品のスチールをしていたときに撮られた監督の肖像だ。
そういえば写真にもある「影武者」の炎上シーンに僕も新聞社の取材で行っていた。クライマックスの現場はビリビリしていて、今か今かと炎上シーンを待っていたのを思い出した。