はす向かいの中華屋。渡り蟹の炒め物がおいしい。

週半ばは体が冷えて体調がいまひとつだった。お風呂に入っても芯から温まらないし、マッサージに行ったらあまりの冷えに「漢方を飲め」と言われてしまう。

ところが大杉漣の撮影をしたらすっかり調子が良くなってしまった。「エクステ」という髪の毛フェチのホラー映画の雑誌プロモーションだった。

配給会社の一室という撮影条件の悪いとこころだったので場所をエレベーター前のスペースに移しセットを組んだ。1灯のライトダイレクトに当てて強いイメージにする。2カットのわずかな時間だったが撮影中、体が内部から熱くなるのを感じた。

1年に何度か上り調子の人を撮影すると感じることがある。そんな時彼らはこちらの体調まで変えてしまうのだ。

夜に昨年ミャンマーでお世話になったDrTと何人かで食事をする予定だったが時間があったので六本木ヒルズ森美術館に「福山雅治写真展」を見に行った。

1500円の入場料を払っての入館。中は平日の夕方なのに結構な人の入りだった。3つのブースに分かれており「福山雅治を複数の写真家が撮った写真」「植田正治砂丘モード」「福山雅治が撮った写真」の構成になっている。

福山雅治の写真は良かった。写真家の目線を感じる。テーマなどにこだわらず、好きな物を好きなように撮った結果、福山雅治という写真家としての人物像が見えてくる。

この頃よく思うのが「無為の時代」の大切さだ。写真家にとってどこにも発表のあてもない、しかし撮らずにはいられない頃の写真というのは後で見返すと何物にも変えがたいほど魅力的だ。

学生時代からアシスタントの時に撮られた横木安良夫の「あの日の僕、あの日の彼女」田中長徳のウィーン、ハービー山口のロンドン。作家のエッセンスのすべてが凝縮している。

促成で世の中に出てくるよりも「無為の時代」の厚みが後の作家の活動を支えるような気がする。

福山雅治の写真もそういう意味で面白かった。数年後また写真展があったら、その変化を見るのが楽しみだ。

写真集を買おうとしたのだが、見本が置いておらず、レジでも中身を見ることができなかった。5000円だけに悩んでいると、横に植田正治の写真集の見本が置いてあった。

めったに見ない砂丘モードが載っている。植田美術館でしか買えないものだ。福山雅治は後で買うことにして2500円の植田正治を買って帰った。