フカヒレ鍋。

2年前に眼底から出血して、網膜の一部が引きつれを起こしたようになってしまった。その場所は網膜として有効に働かず、部分的に像を結ばなくなっている。

遠景はまだいいのだが、近くの文字を見ると引きつれを起こしている場所がぼやけてしまい、はっきり読めなくなってしまった。

ルーペで見ようとしても、一字一字は分かっても情報としてつながりづらく、疲れてしまう。新聞はあきらまた。雑誌も読んでいない。書籍も必要な写真関係しか読まなくなった。

出血が起こる前は、妻が呆れるくらいの活字中毒状態だったから、その喪失感は大きかった。

ワークショップを受講している人が直径10センチほどの大きな水晶玉のようなものをプレゼントしてくれた。

球体の下の部分三分の一が平らにカットされている。それを活字の上に置くと文字が4倍くらいに大きく見える。しかも周辺までまったく歪みがない。球体が光を集める作用もするから文字にコントラストがつく。小さくてあきらめていた文字がはっきり見える!10センチの幅があれば1行分が楽に読める。

ドーム型ルーペだ。あることは知っていたがこんなに劇的に見えるとは。とたんにあきらめていた活字への欲求が高まってきた。あきらめていたものが再び手に入ったような気持ちになった。

家には買ったものの読まず放ってある「クライマーズハイ」がある。まずはそれからだ。