汐留で撮影していたらすぐ横で別のカメラマンがシノゴを構えていた。アシスタントの女性は、フィルムホルダーを代えたり、レンズのセットをしたりと、いかにもプロな感じがしていい。
今日の僕の撮影と言えば「デジタル指定」だったので、アシスタントはノートパソコンに張り付いている。いまどきなのかもしれないが、迫力はない。
先日、11インチ×14インチのカメラを触る機会があった。中野のフジヤカメラに10万5千円で出ていたものをワークショップの人が手に入れたのだ。僕もカメラ屋でショーケースから出して見せてもらったのだが、フィルムホルダー(1枚新品が5万円する)が付属していなかったのと、あまりの大きさに断念した。誰が買うのかと思っていたらワークショップの受講者が手を出した。さすがである。エイトバイテンの所有者は過去何人かいたが11×14は初めてだ。
11インチ×14インチのフィルムがどのくらい大きいかというと、およそA3サイズ。引き伸ばしをする必要がない。ベタ焼きでも大四つ切なのだ。
購入者は、15キロのカメラを電車で2Bに持ってきた。15キロというと、海外に持っていく中身入りのスーツケースの重さだ。運ばれた11×14をジッツォの一番大きい三脚に据え付けてみる。試しに焦点距離240ミリの大判レンズをつけて窓の外にカメラを向けた。
感動である。28センチ×35センチに上下左右逆像に江古田の街が映し出される。自転車や車が通るとたちまちムービーになる。大型ハイビジョンテレビよりきれいだ。240ミリのレンズではイメージサークルが足りず周辺が段々暗くなっていくのもエモーショナルだ。
買わなかったことを激しく後悔した。なにも撮影しなくてもいいのだ。11×14のカメラはスクリーンを見ているだけで写真行為が成立する。
横に置いたシノゴのカメラがおもちゃに見える。11×14を大型カメラというなら8×10(エイトバイテン)は中型カメラ、4×5(シノゴ)は小型カメラということになる。