鰻のひつまぶし、モロきゅう、モヤシのナムル。

四谷三丁目「ニエプス」でやっていた神田憲行写真展『ハノイの純情、サイゴンの夢〜俺個人とベトナム国交樹立12周年記念』を見に行く。最終日だった。

神田さんは事務所がお向かいどうしの御近所さんだ。たまに江古田で出くわす。編集者が彼を紹介してくれたのは数年前だ。そのとき見せてもらったベトナムの写真は、上手なのだが物書きが資料として撮った感じがして、「写真的な魅力」は薄かった。

ところが今回の写真は「写真家の眼」としてベトナムを捕らえていて正直驚いた。この差は埋まりそうであんがい大変なのだ。彼も「ライターアイとカメラマンアイの違いに気がついた」と言っていた。

雑談をしていて彼が言うには「写真学生の写真展を見る態度がなっていない」そうだ。こちらが話しかけても挨拶もしない。写真を値踏みする態度でしか見ない。つまり自分よりうまいか下手かでしか評価しないのだそうだ。わざわざ写真展を見に来ているのに写真を楽しめていないのだ。

「書くのが好きだからライターになりたい、って言う女の子が多いんだけれど、職業でずっと続けていくには読むのも好きじゃないと難しいよって諭すんですよ」と神田さんは言っていたがカメラマンも同じだ。

小説を読まない小説家はいないし、人の音楽をまったく聴かないミュージシャンはおそらく存在しない。なのに人の写真を見ないカメラマンと言うのはびっくりするほど多い。しかも写真家を志す学生もそうなのだ。彼らが必ず言うセリフは「人の写真の影響を受けたくないですから」。

でも人の写真展を見ずに写真展を開けないだろうし、写真集を買わずには写真集を作れない。まして写真を買った経験のない人がオリジナルプリントを売ろうなんてことは無理だと思うのだ。

ニエプスのお向かいのギャラリー「デイズフォトギャラリー」では宮本敬文写真展「PRIVATE」をやっていた。彼の挨拶文には「写真が好きで好きでしょうがない」と書いてある。おそらく彼も撮ることだけではなく見ることも好きだと思う。その一文で彼のことをとても好きになってしまった。

会場に金箔漆箱入りの超豪華電報が置いてある。そっと中を覘くと差出人は「SMAP」とあった。