毎朝トマトと玉ねぎのスープ。ちょっとダイエット。

2日間かけて、今世界で一番予約の取れないレストラン「エルブリ」のシェフの撮影。てっきり料理が試食できるかと期待していたのだが、テクニックを見せてくれただけで食べることはできなかった。

シェフのフェラン氏はまったくの素人の状態から、わずか数年で世界一のシェフになってしまった。下働きの経験がないので正式な作り方は知らない。でもそれゆえ数々の独創的な料理を次々と生み出しあっというまにスターシェフになった。

いままで「やってはいけない」と言われたことを全部やってみる。たとえば、とりあえず素材はなんでも冷凍してみる。新鮮な食材も、フォアグラでもチーズでなんでも冷凍して使う。

香りは風船に詰めて別に出したり、スープがスポイトに入っていたり。食材を別々に口に入れて、最後にスポイトのスープを啜ると味が完成する仕組みだ。たしかにこうすれば香りが飛ばずにダイレクトに舌につたわる。

一見きわもののような料理だが完成度は高い。「エルブリ」は半年間お店を開けず次の料理を考える。だから何度行っても独創的な料理を楽しめるわけだ。

今回はレシピ集の発売のための来日だ。2万8千円もする超豪華本。でも全ての料理のレシピがついているとなれば料理人は買うよなあ。もしアーヴィング・ペンやアベドンのライティングレシピ集があれば3万円でも買うもんなあ。

レシピ集を見て気がついた。ライティングが変わっている。どう変わっているかと言えば順光なのだ。味もそっけもないシンプルな撮影方法をとっている。背景も凝っていない。

料理は通常半逆光で撮られることが多い。そのうほうがおいしそうに見えるためだ。でもエルブリのレシピ集は光をカメラ横からダイレクトに当てている。そのため写真は平坦で決しておいしそうには見えないが、素材の質感や色は逆にキチンと出ている。

レシピ集なのだから、エルブリ料理の素材がどんなもので、どのように調理されているかが分かる方が写真として正しいわけだ。しかし、日本の料理レシピ集ではこのような素材優先な写真は一度も見たことがない。

そんなところにもエルブリのこだわりを感じてしまった。