入院生活7

冬至。快晴。

今日は1年中で夜がいちばん長い日。明日からは「一陽来福」となるわけだ。

午後1時からの手術のため朝から検査が続く。
はじめは苦痛でならなかった眼底検査も慣れてしまった。順応していく自分に驚いてしまう。

12時からはじまった点滴は夜の9時まで続く。

1時に車椅子に乗せられて手術室へ。
肩口に麻酔を2本、目の下に1本。しかし意識ははっきりしている。手術する左目以外を布で覆われる。

強い光を当てられると、目の前が真っ白になって、何も見えなくなる。
「痛くなったら言ってください」と声をかけられ、逆に緊張する。
白目から極細の棒を入れて、中の血を吸収して、小さなハケで網膜をならすのが今回の目的だ。
目の表面をつき破る感じがして、棒状のものが目の中に入ってきたのがはっきりとわかった。真っ白な世界に、黒いステッキが動いているのがわかる。機械音とともに、眼球内に糸状のものが踊りはじめる。それがどんどん機械に吸収されていくのがわかる。フシギな体験だ。

執刀している院長先生が、もう一人の医師に「ほらっ、ドンドン血が出て行く」と声をかけるのが聞こえた。
それが終わると眼底をならしはじめたのが感じられた。痛みはない。
そーっと動かしている。目の中心にある気泡のようなものが動かされているような気がする。
しばらくして、「ヨシッ、だいぶとれた。きれいになったな。これ以上やっると黄班部を傷つけるからな」という声が聞こえてきた。
院長にかわり補助していた医師が、目を縫合する。
あとで聞いたら、よほどのことがない限り、抜糸はしないそうだ。
正味1時間。「きれいになったはずだよ」と声をかけられ「フーッ」っと長い息がもれた。

1時間の安静語、部屋に運ばれた。
ごはんは点滴を打ちながらだ。
見えづらい右目と右手だけの食事はもどかしい。カツ煮はおいしかったは、野菜スープは残してしまった。

ベッドに戻りウトウトしていたら、点滴をしている左手の張りを感じて目がさめた。見たら、腕が丸太のように脹れていた。驚いてナースコールを押した。

点滴が血管からもれていたらしい。右手に針を打ちなおして、左手には湿布を貼ってもらう。
ひどい痛みはないのだが、目の違和感と眩暈とで、トイレに立ったらクラクラとへたり込みそうになる。

明日、眼帯をはずしたらどう見えるのだろう。