第6回ワークショップはプリントの日。受講生は気がついていないかもしれないが、とても高度なことをやっているのだ。
前回撮影実習で撮ったネガを焼いたのだが面白いことがあった。
全員に同じ場所、同じ露出、同じアングルから撮ったものを同じ印画紙に焼いてもらう。そうすると違うのはカメラのレンズの違いだけということになるわけだ。
というわけでライカ対ニコン、ハッセル対ローライという夢の対決が実現した。ライカやローライを使っていても、他と比べなければなかなかライカらしさローライらしさは実感できない。
ところが期せずして対比が出来てしまった。草の葉一つとっても、ニコンの針のようにシャープな描写に対して葉の表面の産毛まで見えるようなズミルックスの柔らかさ。とても同じ焦点距離で撮ったものとは思えない。
ハッセルの骨太なコントラストのつき方に対し、ローライのチリチリとした細かい描写。遠目から見たら断然ハッセルだが、目を近づけてみるとローライのほうに味がある。焼きやすい(トーンが出やすい)ハッセルに対し(トーンを出すのに)手間がかかるローライ。しかし手間をかけた分だけキチンと答えてくれるのもローライだ。
レンズの描写はブランドや値段ではなく好みだということが分かってもらえたようだ。それだけで今回の講座の意味があったかも。
しかし、全員がここまで撮れるようになるとは思わなかった。特にカメラをはじめて間もない人の上達は著しい。プリントが出来るようになると他の人のプリントが分かるようになる。なにが美しくなにが物足りないのかが理解できると写真を見る楽しみが増えるのだ。
講座の最後に秘蔵の森山大道オリジナルプリントを見てもらう。コントラストの高い荒れたプリントと思われている森山大道のプリントだが、実際にはハイライトからシャドーまで実によくトーンが出ている。受講者は皆食い入るように見つめていた。
美しいプリントの正解の一つがそこにはある。