さあ、なにを食べようか。今日はビールがうまいはずだ

現像の上がりを確認する時に手が震えた。現像所で奪うように受け取ったポジにルーペを押し当て一つ一つ見ていく。「ああ、よかった写っている!」

今日は昨年写真集を撮った「Dir en grey」のアルバム告知用雑誌媒体の撮影と、今日本で一番売れっ子の司会者の撮影が2本。

1本目、Dir en greyを撮影するために11時に現場入り。銀座の中華料理店。予定では11時半メンバー入り、5人のソロカットに、雑誌見開き用集合写真1枚、ポスター用1枚を、午後1時まで撮りきらなくてはならない。なぜなら次の撮影が午後2時始まりだから。

1時間半で7カットと言うことは1カット10分ちょっと。しかもメイクに時間がかかるためすんなり時間通りに始まらないかもしれない。そう思うと昨晩は緊張で背中が張ってパンパンになった。寝苦しくて何度も目が醒める。

11時半ちょっと前に1人目が現場入り、12時までに3人撮れたのだが残り2人がなかなかメイク室から現れない。ジリジリと落ち着かない。目が半分うつろになる。

12時半を過ぎた頃にようやく残り2人が来る。用意してあった場所に立ってもらい1人5分で撮影。続けざまに集合1カット目。照明は窓から差す薄い光を使う。闇に浮かび上がるように彼らが立つ。2カット目、小さなタングステンライトを1灯だけつかう。後はお店のほの暗い明かりだけ。35ミリカメラで20ミリを使い、400のフィルムを1段増感。絞りF8でシャッタースピードは2分の1秒。

「OK!」の掛け声をかけた時点で13時15分。3人がかりで後片付けをし、彼らと別れを惜しむまもなく現場を離れた。助っ人アシWと別れ、アシTとともに次の現場に。

銀座から麹町へ。現場が近くてよかった。13時40分到着。大急ぎでセットを組み上げると「5分後にタレント入りです」と告げられる。そこでようやくホッと一息つけた。後は通常通り撮影すればいい。

2つの仕事のフィルムを現像所に入れる。通常は配達してもらうのだが今日ばかりは一刻も早く確認したかった。昨日撮影分の原稿を出版社に届けて時間をつぶす。2時間の仕上がり時間が迫ると手がじっとりと汗ばんできた。車の中では平静を装っていたがかなり緊張していた。ちゃんと写っているだろうか? 結果は… バッチリ!

いまだに上がりのフィルムを受け取ると「ああ、よかった。写っている」と思ってしまう。本当にこれだけは慣れるということはありえない。