お笑い芸人のアメリカザリガニを撮影。ロケハンで選んだのは渋谷ののんべい横町の裏側。その一帯だけ渋谷の空気とは違った澱んだものを感じる。
この辺の雰囲気が好きで撮影場所として何回か使っている。雨がいまにも降りそうなお天気だったので、インタビュー前に撮ってしまう。今日はデジカメ主体で撮ることに決めていた。パソコンのモニターやプリンターのキャリブレーションはバッチリ整えてある。カメラ側の設定は、RAWデータではなくてJPEGのLarge、感度は400。EOSD60に14ミリのレンズをつけ、グリップ型のハンディストロボに小型のソフトライトボックスをつけたものをアシTが離れて持つ。
まず背景の露出を決めてから、ストロボの光量を調節。デジカメだから露出計で測ることなくどんどん進めていける。今まではメーターで計ってポラを切って1分待って、露出を確認したらもう1回ポラを切ってまた1分待って。というのを繰り返して露出を決めていた。
オートで撮ればいいじゃない、と言われそうだがそんなことしたら現像上がりまで不安でしょうがない。自分の意思とはあずかり知らぬところで、何かが決定されるのはいい気持ちがしない。だからこそデジタルカメラの出現は「確認」という意味では革命的と言える。
ただねえ、D60の音がなんともなさけない。「パコッ」「パコッ」と辛気臭い音しかしないから撮るほうも撮られるほうもなんだか今ひとつ乗り切れない。しかも一枚撮っては背面モニターを覗いてしまうからテンポも悪い。
「ユニクロ」のTシャツのCMで、ポートレート写真にかぶさるように荒木経惟の撮影している時の音が流れるものがある。荒木の掛け声とともに、ペンタックス67とおぼしき大き目のシャッター音が響く。音だけで撮影現場の臨場感が伝わってくる。さすがアラーキーだなあ、と見るたびに感心するのだ。
場所を変えて2カット撮ったが、時間にして正味15分くらいだろうか。いままで1カット少なくても15分はかかっていたから半分の時間ですんだことになる。少ない時間で、確実に撮れて、しかも撮ったものがその場で確認できて。いいことずくめなのに、なにか釈然としない。ようするに撮っていて面白くないのだ。
事務所に帰ってパソコンで処理。何のことはない、現場で確認した絵をただ新たにフォーマットしたのにすぎないのだ。そこにはプリントをする時の高揚感や快感はまるでない。