夜、うまいキムチがあったのでチゲ鍋。

年に数回、なんの理由もなく気持ちが落ち込むことがある。特に低気圧が張り出していたりするといけない。ブスッと不機嫌になりご飯もおいしくなくなる。数年前までは、こうなると南の海に行きたくてどうしようもなくなりエアチケットを買いに走った。

もちろん、そんなメンタリティで行くわけだから向こうについても楽しいわけはなく悶々とするのが常だ。でも、だからといって行かなかったりすると、行くまでもっとつらい日々が続きそうでたえられない。

今年もつらい日が突然やってきた。こうなると生理のようなものだ。幸い今日は晴れ、気持ちは沈んでいても外に出るいい機会だ。東京都現代美術館に彫刻家舟越桂の「森から来たささやき」を見に行く。舟越さんからチケットを2枚送っていただいてある。妻と行く約束をしていたのだが、一人で行くことにした。

もう10年ちかく前になるが、20数人の立体芸術家の肖像をアトリエで撮影する仕事に恵まれた。陶芸、彫金、彫刻、漆芸、鋳金といろんな分野の芸術家を訪ねたが、舟越さんのアトリエが際立ってよかった。雑然の中の整然がそこにあり、その中で捉えた舟越さんの肖像は、僕自身とても好きな1枚になっている。

展示は1980年代の初期のものから最新作まで見ることができる。量的にもとても満足のいくものだった。彫刻はもとより制作過程で描かれるドローイングがいい。展示されている何点かは銀座のギャラリーで見たものだったが、何度見て新鮮さが失われることがない。ところどころにアトリエで書かれたと思われる走り書きのメモまで展示してあり、作家の胸のうちが垣間見れるのもよかった。

気分が段々とはれてきたので、恵比寿の東京都写真美術館にまで足をのばす。川田喜久治「世界劇場展」をやっていた。「地図」のシリーズもよかったが、「ラスト・コスモロジー」「カー・マニアック」といった最近の作品に強く惹かれる。展示もただ写真を壁に貼り付けていくのではなく、回廊を回るように三部作をまとめてあり、とても見やすかった。

東京のいいところの一つは、こういった優れた作家の展示がいつでも見られることだとしみじみ思う一日だった。