米沢名物「ひやしる」。具沢山の野菜のおひたし

赤坂写真文化館へハービー山口写真展を見にいく。写真のギャラリーとしてはめずらしく650円払って見るのだが、ここの展示はハズレがとても少ない。前回はマイケル・ケンナ、次回は横木安良夫と、写真好きのツボをついてくる。

展示は1980年代、ハービー山口が住んでいたロンドンの写真。パンクロックなどの当時の音楽シーンをまじえた35ミリのスナップショット。今回の写真展にあわせて発売された、モノクロームだけを集めた写真集「LONDON Chasing the Dream」を、カナダに住んでいて今回の写真展を見ることができなかった元アシSへおみやげとして購入する。

誤解を恐れずにいえば、写真展のオリジナルより、写真集のほうにリアリティがある。一点一点をじっくり楽しむというより、本になったものをめくっていく楽しみの方が数倍強い写真だった。特別なテクニックはなにもないのだが、写っているものはどれも特別なもの。写真の背後にある、彼の異国での10年の生活が色濃く出ている。以前読んだ彼のエッセイの一文にとても好きなフレーズがある。

ある日、地下鉄のホームで、パンクロックバンド、ザ・クラッシュのジョー・ストラマーを見かけた。恐る恐る、「写真を撮ってもいいですか?」と訪ねる僕に、「撮りたいものは総て撮るんだ。それがパンクなんだ」と彼は答え、カメラの前に立ち止まってくれた。その日以来、僕の写真への情熱は一層高まっていった。

今回の写真展のキャプションにも写真集の見返しにもこの一文が載っている。よほど印象深い遭遇だったに違いない。「それがパンクなんだ」。とても勇気づけられる言葉だ。

20歳台から30歳にかけての人生の中で大事な10年間を海外で過ごすというのはどんな気持ちなのだろう?あらためて海外に住んでみたいと強く思わせる写真展だった。

赤坂見附から表参道まで歩いて、カフェギャラリーウィリアムモリスへ。たまたま隣に座った女性客の弟が、芝居の演出家としてフランスに国費留学していたと聞いて、その手があったかと思い出した。写真家にも文化庁助成金が出たはずだ。たしか月10万円と渡航費が支給される。写真家の田中長徳や三好耕三も国費留学生の一人だ。

もしかして行けるかも。そう思っただけでなんだかソワソワしてきた。