宿の名前は「楓林舎(ふうりんしゃ)」

連休中は福島県会津田島に行っていた。知り合いが2年前から始めた宿に泊まり、春スキーを楽しんだ。天気に恵まれスキーをしていると暑いくらい。夜には満天の星空が楽しめた。

宿には暖炉がありパチパチとはぜる火をずっと見ていた。夏のキャンプでも焚き火はかかせない。DNAに組み込まれているかのように焚き火を見ていると心がやすまる。暖炉がブームのようで、中高年層を狙う雑誌で特集が組まれているのをこの頃よく見る。

その暖炉の前で読むために持って行ったのが飯田鉄氏の「レンズ汎神論(日本カメラ社刊)」。副題に「すべてのレンズに神は宿り賜う」とある。

けっしてツァィスやライカのような王道路線ではなく、コムラーだのトプコンだのといった旧い国産レンズから、名もない外国産レンズまで60本あまりのレンズにまつわる話が書かれている。

機材やレンズについて書いている人は多いが、その中で飯田氏の偉ぶらない、そして読者に媚びることのない文章はとても好きだ。実際に触って撮ってという空気が伝わってくる。その上作例の写真がとんでもなくいい。レンズの作例写真で一番凄いのは飯田氏だと断言できる。それとカメラとレンズのブツ撮り写真がこれまたいい。

知り合いの編集者で飯田氏と仕事をしたことがある人がいる。その編集者に「ねえねえ飯田さんってどんなカメラであの特集撮ってたの」と聞くと「ライカだよ。小さなカメラバックで飄々と撮影してた」と教えてくれた。カッコいい。撮影のたびに大がかりな荷物を持ってあるく僕にとって理想といえる。写真がよくて文章がうまくてカッコよくて。

ようするに飯田氏は僕にとってのあこがれの人だといえる。