海老の炒め物を作る。発泡酒がうまい!

朝起きると真っ先に窓の外を見る。今日も晴れ、撮影日和。原宿から御茶ノ水、両国へと向かった。

国技館はちょうど初場所の最中。駅の改札口を抜けると鬢付け油の甘い匂いが漂ってきた。一瞬にして25歳の時の思い出がこみ上げる。新聞社時代、僕は相撲担当のカメラマンだった。ちょうど国技館が蔵前から両国に移り、小錦大関千代の富士が大横綱の時だ。

入社二年目、ようやく目鼻がついた生意気な頃。たった一年の相撲担当だったが普通の人の十年分くらいの経験をした。良いも悪いも全部。今の自分のベースはその時に作られたと思う。鬢付け油の甘い匂いがその時の思いを揺り起こした。

見るという行為より匂いのほうが、深く眠っている記憶を呼び起こすきっかけになる。まったく忘れたと思っていても、香りが鼻孔をくすぐると、脳天を貫くような痺れる感覚をともないながら即座にあの時に連れて行ってくれる。

国技館を見上げながら、しばし「あの時」を懐かしんだ。