農家で仕入れた里芋と葱で、米沢風いもに鍋

今日は一日何にもしない日。風邪の具合はずいぶん良くなった。でも咳が止まらないので薬を買いに出かける。CMにつられてコンタック咳止めにした。

本屋さんで「編集会議」を買う。特集が「写真を読む」だった。表紙の夏目雅子の笑顔が愛らしい。40歳以上の男にはグッと来るものがある。

夏目雅子は僕が新聞社にいる頃にスターへの階段を登りつめ、あっという間に急逝してしまった。今でも思い出すのが伊集院静氏との婚約発表だ。当時あのくらいのスターならホテルの大会場で金屏風の前で華々しく、というのが常識だった。

ところが会見場所は自宅の庭。初夏の日差しを受け、木の下でスカートをふわりと広げて座り、これ以上ないというほどの笑顔を浮かべて質問に答えていた。幸せを絵に描くとあの笑顔になる。今でも時おり夏目雅子を偲ぶ映像として婚約会見のシーンが流れる事がある。周りを囲むカメラマンのなかに24歳の自分を見つけることが出来る。

その場にいた報道陣は、一般的にはまだ無名だった「伊集院静」という男に嫉妬したはずだ。家に帰ったらあの笑顔が出迎えてくれるのだ。「イジュウインとはいったいどんな男だ」と、はずかしそうに婚約指輪を見せる彼女をファインダー越しに見ながら思っていた。昭和59年7月、彼女は26歳だった。

翌年「三浦和義」逮捕のXデーが確実となり編集部の緊張が高まっている中、突如「夏目雅子死亡」のニュースが飛び込んできた。そしてその直後、三浦和義は逮捕された。

長い一日が終わり、それがどんなに大変なことだったのかというのは、随分たってから分かった。今でも夏目雅子の映像が流れると、あの幸せ一杯の笑顔を思い出す。