「プレイスM横浜」

朝=焼き鮭、納豆、佃煮、白米、味噌汁/夜=竹鶴25年ものでいろいろ

2B Channnelのアシスタント募集は半日で7人の方から応募があった。普通ならそこからひとりお願いするわけだが、せっかく2B Channnelが好きで応募してくれたのだろうから、全員に協力してもらうのはどうだろうかと考えた。アシスタントというよりもブレーンとして、それぞれの得意分野で協力してもらうのはどうだろう。アートの世界ではコレクティブ(集合的)と呼んでいるもので、強直なリーダーのトップダウンではなくて、集合値から考えていく方法だ。

午後から反町にある「プレイスM横浜」https://placem.yokohama/に顔を出す。昨年オープンしたギャラリで、名前にあるように、新宿の「プレイスM」系列にあたり瀬戸正人さんが監修をしている。9月25日まで(月休)やっているグループ展に僕も参加している。タイトルは「2B or not  2B vol.4」。ワークショップ2Bに参加していた人たちが集まっての展示になっている。その中のひとりがギャラリーオーナー。横浜から歩いて15分、反町からだと5分もかからない場所にある。新宿の「プレイスM」とはまったく違った空間。今までに森山大道や北島敬三なども展示をしているし、今後もすごいメンバーが予定されている。来週9月22日(木)15時くらいから僕も在廊しますので是非お越しください。19時までです。

 


<2021年9月16日の日記から>

「話し言葉のように撮る」僕が主催する11月のルデコグループ展示に向けて、相談にくる人が多くなってきた。今日も学生がひとりやってきて2時間半くらい話をする。3年生ながら精力的に活動している。先日も学生主催のグループ展に参加していたし、11月のルデコに参加したあとは、個展も開く予定。すごいね。学生時代に何をやるかで10年後が決まる。学生時代にボーっとしていた僕は、その後失われた10年になったわけだ。水曜日はライブ配信の日。いろいろ資料を揃えて準備するのだが、今回配信状態が乱れて止まってしまった。再度入り直すもちょっとグダグダ。スティーブン・ショアの写真集紹介だったが、これはもう一度きちんと説明したいと思う。どうやら“ヴァナキュラー“という言葉がキーワードになってきそうだ。本来フォークとかネイティブと同じ意味合いなのだが、アートや建築においては別の使われ方をしている。今回ショアのインタビューなどをまとめていて「話し言葉のように撮る」という言葉が引っかかった。書き言葉は頭の中のものがワンクッションおいて出てくるが、話し言葉は直接的。でもそこにクセは残る。その辺が写真的だ。「2BChannnelラジオ」を続けることで、なんだか自分の写真に対するアプローチが定まってきそうな感じがしてきた。

 

<2020年9月17日の日記から>

週一度の銭湯通はもう2年になる。それだけは変わらないな。銭湯帰りには、高円寺の「フジ」で定食を頼んでビールを飲む。たった半年で今まで普通だったことが普通でなくなり、生活も随分変わってしまった。いかに「人を集め、密にするか」ということを考えてきた20年なのに、突然「三密禁止」と言われてしまって、あらゆることができなくなった。ワークショップHは7期目が始まる直前で中止せざるを得なくなり、予定されていたイベントや地方ワークショップものすべて中止。さすがに当初はうろたえたけど、もう半年たってなれっこになってしまった。ワークショップに使っていた部屋は模様替えを重ね、YouTube配信を考えたレイアウトになった。たまに相談に来る人がいるけど、基本ひとりだけだから、以前のように10人入ることを前提とした部屋作りをしなくていい。昨年9月からYouTubeを始めたおかげでというか、ZOOMを使ったオンラインでの打ち合わせや講座に移行するのになんの抵抗もなかった。今打ち合わせで外に出ることはない。全部ZOOM。そして企業イベントに呼ばれるときも、基本的に人を集めるのではなく収録後に配信、もしくはライブ配信になる。となってくると、デスク周りは配信用の機材でえらいことになってきた。カメラを切り変えるスイッチャー、音声をミックスするオーディオインターフェース、そしてマイク、マイク、マイクの山。余裕で10本くらいある。YouTubeを始める前に「動画は絵より音」とは聞いていたけれど、マイク問題は「沼」の様相を呈している。コンデンサーマイク、ダイナミックマイク、ガンマイク、ピンマイク、ワイヤレスマイクと用途が違うから集めざるをえない。とくに『2B Channel』はインタビューが多いから撮影状態が常に変わる。もう試行錯誤の繰り返し。パソコンは2015年モデルのMacbookPro15インチで、写真を扱うにはまったく問題ないスペックのものを買っていたのだが、動画編集となると厳しいことが増えてきた。そして決定的な問題として外付けのカメラをZOOMやライブ配信に使おうと思ったときに、音声と映像の遅延がひどくて使えないのだ。3秒くらい遅れることがある。これはPCの性能が原因なのか? グラフィックボードが遅いからか? いろいろ試してみたけど解決策はないようなので、2020年MacbookPro16インチモデルを注文してしまった。あまりの高額商品に一晩寝付けなかったくらい。しかも昨日はヨドバシに行ってソニーのコンデジVZ-1も買ってしまった。他にも椅子を注文してしまった。で、あと今年中に必要(欲しい)のはインクジェットプリンターかな。「キヤノンEOS R5」をあきらめたので、その代わりだと言い聞かせてるわけです

募集は一旦終了です

朝=マグロの漬け茶漬け/昼=門前仲町の蕎麦/夜=新高円寺の謎のお店

新高円寺駅からの帰り道の途中に、奥に引っ込んでいて何の店かわからず、料理屋みたいだけど店名も記号で読めないお店があってずっと気になっていた。行ってみたら高円寺らしからぬ内装と客層で、ジビエ肉もだすビストロだった。いい意味で思っていたと全然違って驚いた。ワインの種類も豊富。イタリアンになるのかなあ? どれもおいしかった。

東陽町でやっている8×10のグループ展にちょっとだけ顔を出して、隣でやっているピンホールグループ展をみた後に、門前仲町からぷらぷら散歩がてら、歩いて妻の実家にちょっと寄ってみた。3年前に義父も義母も亡くなってからは行くことがなかった。30年前に初めて挨拶に行った時と家の作りは変わっていないけど、代替わりした感はある。

2B Channnelを手伝ってくれる人を募集したところ、半日で5人も応募があったので一旦募集は終了することにした。ちゃんとしたキャリアがある方もいて、5000円だけど大丈夫なのかと心配になるくらい。いろいろできそうな感じになってきたので、ハッセルの新レンズ購入は延期して、新しい企画に資金を使うことにした。

 

<2019年9月15日の日記から>

家から歩いてギャラリー冬青へ。片道30分近く掛かるが、電車に乗っても時間は同じくらいなので、歩いていくことが多い。ぶらぶらと歩きながらオリンパスOM1と、昨日買った75-150mmF4のセットで撮影してみる。絞り開放は、200mmはF5だったから一緒だと思っていたら、F4だった。普段使わない望遠レンズだからファインダーを覗くと面白いのだが、望遠レンズって見た目が不審者。結局持ち歩いただけで、シャッターはたいして切ってないけどOM1は持っているだけでよかったりする。高校時代は望遠レンズって特別な感じがして、焦点距離が長ければ長いほどプロっぽいと思っていたな。ズームレンズも倍率が高ければ高いほど高級品だった。冬青では小林紀晴写真展をやっている。9.11が起きた時に小林さんはNYに住んでいて、ワールドトレードセンター の崩壊を目の当たりにした。彼は新聞社にいたこともあるので、現場が気になるのだが非常線が張られていて入れない。そんな時にタブロイド版の新聞を目にした。それを壁に貼って複写したシリーズなのだが、トーマス・ルフが9.11の時にNYにいたけど、写真が撮れないからネットに落ちていた写真で作品を作ったのと方向性は全く同じ。今なら普通だが、20年前の写真家の行為としては先見の明がある。見ていてその行為に驚いた。その中の1枚、ジャスパー・ジョーンズの「旗」を連想させるアメリカ国旗が写ったものを購入した。

 

<2005年9月15日の日記から>

ホワイトバランスに関してのグッズ情報。色々苦労しているようだね。

http://dc.watch.impress.co.jp/cda/item/2005/03/07/1107.html

http://dc.watch.impress.co.jp/cda/longterm/2005/07/28/1993.html

あるカメラマンは球体をグレーに塗って、グレースケールならぬ、グレーボールとして使っているとのことだ。やっぱりこれが一番だろう。はたして製品化されるか? 自分で塗ればいいかというと、ニュートラルなグレーインクを探すのが大変だ。壊れたノートパソコンは、結局4万6500円で修理した。6万9800円で新品が買えるのに、2年落ちのパソコンに修理代を払うのはいかがなものかと思ったのだが、バッテリーで正味8時間駆動する、重量がとても軽い、クレードルでメインパソコンとの連結ができる、という「シャープメビウス」のメリットは捨てがたく修理することになった。ロケ先でのストレージとして考えると、まだまだ実用価値は高い。余計なソフトは削除してデフラグをかけ、これで万全だ。カメラ屋の店頭で、これぞ! という新製品を見つけた。富士フィルムから出ているズームレンズ一体型カメラだ。レンズ交換はできないが、超高倍率ズームレンズが広角から望遠まで、だいたい28ミリから300ミリ相当までカバーしている。パリに仕事で行ったとき、現地のカメラマンが同じような機能のミノルタディマージュを使っていて、とても使いやすそうで、印刷の仕上がりがきれいだったので、この手のカメラは気になっていたのだ。そもそもデジカメにミラータイプのレンズ交換式一眼レフは不必要だろうと思っていた。従来のレンズ資産を使うにはいいが、結局デジタルの性能を発揮させるには新設計のレンズでなければならないのだから。30分以上いじくり倒した結果は、わざわざEOS5Dを買わなくていいかも、と感じてしまったほどだった。

2BChannnel新企画を準備中

朝=おにぎり、茹で卵/昼 ポーク豆カレー、玄米、とうもろこしと枝豆のダシ/夜=赤イカ刺身、いろいろ

今日も打ち合わせで昼にお客様。カレー好きな45歳。カメラ好きなのでハッセルX2Dを見せびらかす。自分のじゃないけど。なんでもそうだけど、触っているうちに落ち着いてくる。現物を見るまでは鼻息が荒かったけど(笑)。打ち合わせは新しい2BChannnelの企画のことで、半年くらいかけてやってみようということになった。そこで僕ひとりではどうしようもないので、若い方(20歳台)で2B Channnelを手伝ってもらえる方を探すことにした。とはいえ、プロにお支払いする余裕もないので、インターンシップのようなものだと思ってください。しかしタダ働きではないです。些少ですがお支払いします。twitter @2BChannel2019 までお願いします(面談あり)。

夜は火曜日だけどライブ配信。水曜日にX2Dを返却しなくてはならないので、その前に、配信で見せてたかったから。カメラの話はいくらでもできる。しかも楽しい。いい仕事だ。

 

<2021年9月14日の日記から> 

数ヶ月に一度、ライカM9が使いたくなる。普段は50ミリが多いのだが久しぶりにエルマリート28ミリを付けて撮ってみる。CCDセンサーのパワーは健在。光がたっぷりある日はM9だな。午前中は学生とZOOM。今やっている作品作りで迷ってるようだったが、側から見れば蛇行しながらもちゃんと前に進んでいる。今日は「ズレ」について話した。ズレの要素をどのように取り込むのか、なぜズレが必要なのか。ズレるためには何か元ネタの必要があるよ。午後は久しぶりに吉祥寺の「book obscura」へ。写真集専門店で、いつも店主から面白い話が聞ける。今回はステファン・ショアの写真集を探しに行った。先日「2Bchannel」でクーデルカをやったので、今度はカラーをやってみようと思ったのでショア。ショアの代表作「Uncommon Places」は持っているはずなのにどうしても見つからない。もう一度買うのもなんだかすっきりしない。でもさすが「book obscura」、ショアが「Uncommon Places」を撮影している時に、同時にライカで撮ったものを集めた写真集があった。「Uncommon Places」は大型カメラの8x10で撮られているが、今回購入した「THE TRANSPARENCIES」は35ミリで撮られている。8x10のカメラを構える前に、ライカでロケハンみたいなことをしていたんだろう。これがかなり面白い。「2BChannnel」のネタにぴったりな本が見つかった。吉祥寺から中央線で中野まで出てフジヤカメラへ。2階のスタジオ用品コーナで細いポールとクランプ購入。M9は今いくらくらいするかと思ってライカコーナを見てみたら、M9はなくてMモノクロームが2台58万円で出ていた。驚いたことにフィルムライカが20万円以上している。一時10万円を切っていたのに。不思議なフィルムカメラブームだ。帰りにジャンク館を冷やかしたら、先月ここで買った4000円のオリンパスOM1用ズームレンズ、ズイコー75-150ミリF5が1500円で売っていた。レンズに曇りもなくて程度は上々。懐かしいなあ、これ高校生の時に持ってたやつだ。45年ぶりの再会になる。いいもん見つけた。

 

<2007年9月4日の日記から>

「インドは魂を奪う」成田から7時間かけてシンガポール。3時間のトランジットの後4時間かけてインド・バンガロールへ。インドは初めて。なぜか行ったことはなかった。インドの事情通から聞いた話では、バンガロールはIBMやマイクロソフトなどIT系大企業のビルが林立していて、インドITの総本山的な言われ方をしている。インドであってインドではないと言われていた。勝手なイメージは幕張のような近代都市かと思っていた。なのに、たどり着いた空港は国際空港と呼ぶにはあまりに貧相で、預けた荷物がちゃんと出てくるか心配になった。空港から外に出ると人、人、人の波。出迎えのためのネームカードを持った人が両脇にびっしりと並んでいる。真っ暗な中に真っ黒な顔。目だけが白く浮かび上がっている。ホテル出迎えのタクシーは、これまた道をびっしりと埋める車の波を縫うようにクラクションを鳴らしぱなしで進んでいく。この地では、クラクションは常時使うが、ウィンカーはほとんど使わない。バイクと三輪オートリキシャと車がわずかな隙間に鼻先を突っ込んでくる。IT企業の街という印象はどこにもない。大通りから未舗装路の道に入っていく。とても1泊45000円のホテルへ続く道とは思えない。どんなところへ連れて行かれるのかドキドキしていると、突然目の前に別世界のような巨大ホテルがそびえていた。部屋の中は、見た目は立派なのだが、あちこちにほころびが見える。デザインは奇抜だが使いづらい。特にバスルームを使うにはパズルのような知恵を要求される。窓の外にはゴルフ場が見える他はIT産業を思わせるビルなどどこにもない。バンガロールと言っても場所が違うのかなと思っていたら、まさにそのホテルがIBMやマイクロソフトの敷地と隣接しているというのだ。翌日撮影のために車で移動すると、昨日見えなかった街が道の両端に見えた。どうみてもIT企業がこぞって進出しているというイメージではない。イメージしていた高層ビルなどどこにも見えない。あるのは今まで写真や映像で見ていたとおりのインドそのもの。食事はやっぱりカレー。日本で食べているインドレストランの味。ベジタブルカレーの種類が多い。日本で食べるのと決定的に違うのは「ナン」の味。小麦が甘くておいしいのだ。日本ではお米を選ぶが、インドではナンを選んでしまう。バンガロールで作られたワインを注文してみた。びっくりするほどおいしいではないか。お土産に1本買ってしまったほどだ。お値段1500円の割にはおそろしくコストパフォーマンスが高い。2日目に行ったバンガロール市内のマーケットはすさまじかった。撮影の途中であったため、30分しかいることはできなかったが、これまで数多く見てきたマーケットの中でも一番だと思える。よく「混沌」とか「カオス」という言葉を安直に使っているのを見かけるが、このマーケットのこの光景に使うのが正しいのではないか、それほどの喧騒だ。上海城内のマーケットもすごかったが、インドはそんなもんじゃない。同行した海外経験が豊富なノンフィクションライターIさんが「中東が一番かと思っていたが、インドのほうが何十倍もすごい」とうなっていた。狭い道一杯に人が溢れ、両脇に店がびっしりと並び、その前に露店が出て、さらに道端にはシートをひいた物売り。三輪オートリキシャが人や物をのせて人の群れに突っ込んでくる。ローライを覗いているだけでファインダーに人が飛び込んでくる。あとはただシャッターを押すだけ。「渡部さん恍惚の表情をしてたよ」。たしかにこんなに興奮して撮影したのは久しぶり。鬼海弘雄の写真集『INDIA』の帯には「インドは魂を奪う」とあるが、意味がようやく分かった気がする。今日はシンガポールへ戻ってきた。移動日で撮影はなし。これから街にでてみようと思っている。

アワガミファクトリーのインクジェット用紙を数種類試している

朝=チーズトースト/昼=粗食、コーンと枝豆のサラダ/夜=テイクアウトのお寿司、サッポロ一番味噌ラーメン半分

江古田にあったプアハウスをよく知っている先輩がやってきたので、お昼に「粗食」を出す。プアハウス定番のメニューだったので、懐かしがってもらえた。「粗食」を言葉で説明するのは難しい、「カレーで煮込んだ肉が入った洋風茶漬け」なのだが。そう書くと全然おいしそうな感じがしない。僕は学生時代から40年近く何千食も食べてきた。

今日は特に仕事もないので部屋でデジタルモノクロプリントの続き。なんとなくいい感じになってしまって、ちょっと戸惑う。フィルムと印画紙だと、9割はボツになるのに、デジタルだと9割OKになってしまう。基準が掴めない。合間合間にハッセルブラッド原宿から借りているX2Dを触る。レンズを付け替えたり、X1D2と比べてみたり。X2Dはいいカメラだ。そんなことして部屋の中で遊んでいたら、妻に「わかってるでしょうね」と釘を刺された。

 

<2013年9月13日の日記から>

朝、テレビをつけたら「写真甲子園」の番組をやっていた。本来は北海道東川町で行われるのだが、今年は課題を地元で撮影し、リモート審査を受けるものになっていた。写真に順位をつけるのって難しい。1位と2位の差がどこにあるかなんて明確な答えはない。体操とかフィギュアスケートのように、見た印象を技術点として割り出すこともできないし、そもそも技術が高いから良い写真とは限らない。ロバート・フランクのプリントはゴミだらけだったりする。高校生相手だけに「写真甲子園」の審査員も大変だろうな。今年の優勝校は沖縄工業高校だった。最終的に提出された6枚の写真はロング、ミドル、アップ、広角、標準、望遠を使い分けて沖縄の生活をとっていた。わずか数日で撮られたとは思えないバリエーション豊かなものだった。まるでユージンスミスのフォトエッセイのようだ。確かに僕が審査員でも間違いなく推すだろう。しかしこの方法論は、1960年代の雑誌掲載を前提としたもの。60年も前の「良い写真」の形だ。コンテストにはレギュレーションがあるから、上位入賞のためのテクニックというものは存在する。ツボは間違いなくある。番組で追いかけていた女子学生が最後に「そういうものから離れた写真をこれから撮っていく」と語っていた。なんだ心配しなくてもちゃんとわかっているんだな。

 

<2013年9月13日の日記から>

トークショーでは、観客の一人をプロジェクターの反射光を使ってポートレート撮影をするサプライズもあった。アレック・ソス。ちょっと変わった名前の写真家が今世界で注目を浴びている。最年少でマグナムの正会員になって、出す写真集はあっという間に売り切れ、無表情の全身ポートレートと、風景とを組み合わせたソススタイルは、ここ数年写真のスタンダードになっているところがある。その彼が来日して、様々なイベントを行うというので、昨日スライド&トークショーに行ってきた。彼はレビューサンタフェでアワードを獲り、その後大きく活躍したとあって、向こうでも話題に上ることが多かった。僕はサンタフェに行った時、お土産代わりに現地の写真集専門の書店「Photo eye」でソスの写真集を2冊買って帰った。1冊は、いわゆるソススタイルになる前のモノクロスナップのストレートな写真だ。これがなかなか面白い。ちょっとナイーブというか、ガンガン攻める写真ではない。経歴としては最初、建築や彫刻を専攻していて、後に大学の授業がきっかけで写真を始めている。意外とも思えたのがロバートフランクに大きな影響を受けていると言っていたことだ。トークショーの中で記憶に残ったのは、

「移動が大事。物理的な場所の移動も、写真の中の視線の流れも」「アメリカを撮る。しかし海外にも行く」「写真の並べ方には自分だけのルールがある。並べられた1枚目と2枚目には隠された共通点が潜んでいるが、あえて説明はしない」「最初はポートレートを撮るのが苦手でガールフレンドしか撮れなかった。訓練としてまず子供を撮り始めて、その後はあんまり怖そうじゃない人を選んで撮影していた」「本にするのが好き。出版社の社長でもある」「(ソスと言えば8X10のカメラを使うことで有名という前提で)今回は8X10のカメラを持ってきたのか? という質問に対し、僕が8X10のカメラで撮ったシリーズは2つだけ。プロジェクトに合わせてカメラは変えていく。今回はデジタルカメラ(会場に持ってきていたのはハッセルのHシリーズだった)だし、先月旅行に行ったときはディスポーザルカメラ(使い捨てカメラ)だった」「プロジェクトありきで写真を撮る。大きなものだけでなく小さなプロジェクトもたくさん行う」「写真の制作を行うにはまずは訓練が必要で、全てをコントロールできるようになったら肩の力を抜いて撮る。”マッスルメモリー”を身に付けるには、およそ10年が必要と言われているが自分もそうだった」「卓球が大好き。日本でも卓球大会をやるから皆来てね。大きなトロフィーも用意したから」

今世界でもっとも注目度が高い写真家のトークショーということで、どんな難しい話になるかと思ったら、普段自分が考えていることと似ていて驚いてしまった。しかも卓球好き。写真の質問じゃなくて卓球の質問したほうが喜んだに違いない。ソスはとてもフレンドリーらしく、ショーが終わっても丁寧に質問に答えていた。

 

借りてきた!

朝=チーズトースト/昼=玄米のトマトリゾット/夜=豚すき焼き丼

ルデコG展に向けての相談者が4人。相談というよりも久しぶりに顔を合わせての雑談っぽい。瞑想と写真とか、60年前のスライドから見る写真の物質性とか。ああだ、こうだと話が続く。

夕方に原宿のハッセルブラッドに向かう。新発売のXD2とレンズを2本借りることができた。夜の「美術史講座」1回目の配信が終わってから、箱を開けて1億画素のカメラを触ってみる。形はほとんど僕が持っている5000万画素のX2D2と変わらない。なのに、中身が違いすぎる。AFが早くて正確。手ぶれ補正も7段分。こうなればいいのにが全部解消されている。定価は120万円だが、マップカメラで108万円で出ていた。ライカM 11と同じ価格帯。意識したわけではないと言っていたけど、寄せてきた気がするね。新製品の55mmと38mmのレンズがいいんだこれが。しかし二つとも50万円オーバー。カメラとレンズで220万円。ライカM 11にアポズミクロンと同じか。新しいカメラを触ると嬉しいというか元気が出るというか。水曜日には返さなくてならないので、それまで楽しんでおこう。

 


<2021年9月12日の日記より>

今日は2BChannnelの収録をしようと「写真学生」ともう一人ゲストを用意していたのだが、彼の写真を見て話し込んでいるうちに、あっという間に時間がたってしまい収録はなし。「写真学生」の写真の何がいいのか、とりたてて褒めるポイントも見つからないこの写真に、なぜ魅力を感じるのかということを話していたのだが「何の役にも立たないところがいいのではないか」ということになった。「なぜあの部屋の住人がこんな透明な写真が撮れるのか?」。誰でも撮れるけど、誰も撮らないものを拾い集めている。もし時間に余裕があっても、こんな風に町を歩いて何でもない写真を撮れないと思う。もしかすると違う時間軸の中に生きてるんじゃないか、そう考えると片付けられない部屋も何となくわかるような気がしてくる。「成人は、社会人はこうあるべき」というものが脱落しているから、トレードオフであの透明さが出てくるんじゃないか。生きづらい人にだけ与えられたギフトみたいなものかもしれない。そんなことをグルグルと円環するように話す一日だった。夜は美術史講座1回目「ルネサンス」の再配信。

 

<2012年9月12日の日記から>

仕事やグループ展の準備でいっぱいいっぱいなのだが、今日は米沢に出かけた。1カットだけ雑誌見開きに使う写真を撮るだけの仕事なので日帰りでもできるのだが、編集部のお許しが出て一泊することにした。来たのは米沢から1時間ほどの飯豊(いいで)の村だ。泊まるのは「農家民宿」。いいかえれば普通の家。特別な部屋があるわけじゃなくて布団が敷いてあるのは仏壇の間。夕食は茶の間で、その家のご主人と差しでビールを飲む。いろいろ地元の話を聞けた。料理は旅館のそれではなくて、懐かしい米沢の味が並ぶ。友人がこの村の産業創生の仕事をしているので、連れてきてくれたのだ。村の真ん中にある小学校と中学校はもうじき廃校になる。これでますます高齢化が進むことになるだろう。この学校はとても立派な施設を持っている。体育館もある。廃校後に何かに使えないかと考えているところだそうだ。ここは絵に書いたような農村。宮崎アニメに出てきそうだ。人もいいし、食べ物も美味しい。思わず住みたくなるが、冬は3メートルを越す雪が積もる。今何かをやらないと村自体がなくなってしまう可能性すらあるという。人口は最盛時の3分の1以下、1000人にも満たないそうだ。旅館が一軒、農村民宿が10軒あって100名の観光客を受け入れることができる。体育館もグランドも施設もある。釣りができて山登りもできて、なによりのんびりできる。冬は台湾の人が雪見にやってくるそうだ。例えば「夏合宿一ヶ月で完全英語マスター 」とか、「高校生受験合宿」とか何かできそうな気がするのだが。風景写真を撮る人の間では、飯豊は有名なところだ。それだけ美しい場所ということだ。一度ツアーでも組んで来てみようかと思っている。

「8×10展」と「駄カメラ展」

美術史本講座は11日日曜日の夜8時から。

朝=きつねうどん、茹で卵/夜=鳥唐揚げ、トマトときゅうりとチーズのサラダ、べトナム風炒飯

8×10グループ展の搬入に東陽町の区民センターへ。毎年大型カメラ縛りのグループ展が10年以上続きていて、僕も数年前から参加している。このデジタル時代に大型カメラをわざわざ使っている「変わり者」の集団なので居心地がいい(笑)。なにせフィルム1カットが千円くらいする。カメラだって特殊。わざわざ費用対効果で考えたら一見無駄なことをやっているのだが、これが写真を撮っている気にさせてくれる。

今年は新宿ゴールデン街の「こどじ」で撮影したものを2枚展示している。このグループ展がなければ、8×10のカメラを使うことはないだろうな。一旦離れてしまうと戻れなくなってしまって、選択肢をひとつ手放すことになる。なのでこのグループ展は僕にとって重要。

東陽町から小伝馬町へ出て「Monography」に行ってみた。まずビルの1階にあるアイアイエーギャラリーで「駄カメラ展」を見る。これは3000円以下で買ったカメラを使うという縛りでの展示。これが面白い。すべてフィルムカメラで撮られているのだが、モノクロの方が多かった。カラーフィルムが入手困難ということも影響しているのかもしれないし、自分でプリントするためにモノクロを選んでいるというのもあるだろうな。

「Monography」はアイアイエーの2階にあって、写真集や雑貨、ギャラリースペースもある。写真家の上田晃司さんとコムロミホさんが運営している。上田家には一度インタビューで自宅に伺ったことがある。今回は上田さんのルート66を撮影した作品の展示をやっているというので見に行ったのだ。ステファン・ショアを彷彿させるオンザロードの写真が並んでいる。作品集も出ていたので購入。これはライブ配信の時に紹介しようと思っている。

上田さんはデジタルハッセル使いで、すでに1億画素のXD2のレビューもYoutubeでやっている。「普通に使いやすいカメラになりました」ということで、早く触ってみたい。新型レンズを付けるとおそらく160万円から170万円。ちょっと前までだったら500万円はするようなスペックなんだけど、安いとは言えないよなあ。

 

<2021年9月11日の日記から>

午前中に用事を済ませて東京都写真美術館へ。まず2階の「宮崎学 イマドキの野生動物」。カメラを「けもの道」に設置して、そこを何かが通った時にセンサーが感知し自動でシャッターが切れる。これによって撮られた写真は人間が介在しないせいで本来の姿のまま写る。通常は望遠レンズで捉えることの多い動物写真が、触れるくらい近くで写っている。動画もあったけど、写真のほうが全然面白い。じっくりと細部まで見る楽しさ。これまで見てきた動物写真展で一番面白かった。

3階は「リバーシブルな未来 日本・オーストリアの現代写真」。

“日本とオーストラリアという二つの国にはそれぞれの歴史的背景があり、そこに住む人々は独自の精神文化を培っています。しかしながら、グローバル化が急速に進むなか、想像をはるかに超える出来事が日々当たり前のように起こる現代では、私たちが国という枠を越えて共有できるものはますます多くなっています。”   (東京都写真美術館のホームページより抜粋)

 個人的には横溝 静の作品が見られたのは思わぬ収穫。中々出てこない作家なので。オーストリアの作家をまとめて見たのは初めて。ヨーロッパとアメリカから離れた文化は日本文化と親和性があるのかもしれない。地下では沖縄の女性作家「山城千佳子リフレーミング」をやっている。ほぼ映像作品で奥の会場でやっているのは「映画」。何となく1970年台日活時代の大島渚を彷彿とさせる。思わず30分くらい見ていた。1階に戻ったらちょうど映画の上映が始まるアナウンスがあったので内容も知らずにが飛び込んだ。どうやら世界の秀作アニメの上映のようだ。「ナタ転生」という中国の3DCGアニメだった。映像は素晴らしいのだが、僕にはストーリーが1ミリも刺さらず「萌え」要素もゼロ。配信で見ていたら30分で脱落していただろうが、2時間きっちり見てしまった。誰かがゲームをしている画面を横から見ている感じで、内容は「京劇」にある孫悟空の冒険か三国志。今日は違う文化を垣間見る日だったということだ。

 

<2008年9月11日の日記から>

10日夜に帰国。ギリシャのミコノス島から成田までは、ほぼ24時間かかる。でもラッキーなことにビジネスクラスにアップグレードしてもらうことができた。今のビジネスクラスって座席が完全にフラットになるのね。ものすごい楽ちん。今回はヒオス島、サントリーニ島、ミコノス島、世界遺産のデロス島を巡ってきた。毎朝、日の出とともに起きて撮影を終えてホテルの自分の部屋に戻るのが12時過ぎ。日本じゃ考えられないくらい働いた。編集者もライターもコーディネーターも凄い人ばっかり。何が凄いって経験も機転も体力も兼ね備えている。ライターの女性なんて世界で行ったことのないところはないんじゃないかというほど。小脇にかかえたバックからは、魔法のポケットのようになんでも出てくる。お醤油にワサビにショウガに柚子胡椒。カリカリ梅にレモンにカッパえびせん。船で酔って青い顔をしていると、さっとバックの中から酔い止めの薬トラベルミンが出てくる。トラベルミンなんて小学校以来だが劇的に船酔いにきく。飛行機の乗り遅れ、ホテルトラブル、取材不許可、毎日のように降りかかるトラブルを笑い飛ばしてしまえる彼女のバイタリティのおかげで、取材中なんの不安も感じずにすんだ。リゾート地で恥ずかしかったのだが、カメラマンベストを着用して撮影。デジタルとフィルムを使い分けながら島を撮影していった。さっそく今日、ポジフィルムを現像にだして仕上がりを確認する。ラボのライトテーブルに並べる時はいつでもドキドキする。デジタルで同じカットは撮っていて確認ずみなのだが、フィルムだと別物のように写っている。そのなかで1枚、ルーペを覗いていて声をあげてしまったカットがあった。絶対デジタルでは無理というほどの鮮やかさ。ヴィヴィッドなのに嘘っぽくない。10日間苦労したかいがあった。

 

アワガミのインクジェット用紙を数種類試している

朝=玄米のトマトリゾット/おやつ=台湾風カップ焼きそば/夜=キャベツとササミの和サラダ、蒟蒻ピリ辛煮、味噌豚の炒飯

昨年、松本周辺を撮影したシリーズは『da.da』というタイトルで小型ながら写真集にまとめたのだが、10月にルデコで、2月には別の場所でプリントの展示をすることになっている。ルデコでは大型プリントをするのだが、2月の会場ではどうしようかと思案中。同じことはやりたくない。まったく別のものにしたい。今までやったことのないことが一つある。デジタルで撮影してモノクロにプリント。個人的には何度もやっていることだが、個展ではやったことがない。ちょうど小澤太一さんの展示を見たこともあって、モノクロプリントをテストしてみることにした。

PCのモニターでは感じが掴めないので、20枚ほど、いろいろな用紙を使ってプリントしてみた。調整はLighyroomがメインで、出力はPhotoshopから行ってみた。試してみた用紙の中ではもちろんバラいた調整は厚手が一番データが出るのだが、アワガミの和紙で「プレミオ雲流」や「びざん純白」が相性が良さそうだった。まだまだ実験段階だけど、デジタルモノクロも面白い。

 

<2021年9月10日の日記から>

日記を見てくれている人から「ヨコイのソースって何ですか?」とよく聞かれる。名古屋近郊でしか手に入らない「あんかけ胡椒味パスタソース」のことで、ちょっとした中毒性がある。適当に野菜とソーセージでも入れて軽く温めればOK。てっきり愛知県で有名なのかと思えば名古屋中心部でも手に入らず、意外と地域限定なんだそうだ。とここまで書いて、もしやとAmazonで「ヨコイのソース」で検索したらちゃんと売ってた。これでいつでも注文できるが「名古屋でしか手に入らない」という希少さが味に深みを出していたかも。もともと喫茶店のメニューだったらしい。「名古屋あんかけ文化」の結晶。写真集制作の相談を受ける。最近の出版社が出す写真集としては、定価2000円のものと、税込5000円くらいの価格設定が多いようだ。2000円のものは3000部、5000円のものは600から1000部を制作することが多い。となると、全部売り切って300万円から600万円の売り上げ。ただし、書店流通した場合、出版社に入ってくるのは、総売り上げの約半分。経費で一番大きい印刷費は、部数にはほとんど関係なく150万円から250万円くらいかかる。だから商売としての旨味はほとんどなくリスクばかり大きいので、大手の出版社が写真集制作に乗り出すことは、蜷川実花か石川直樹くらいメジャーな存在でない限りほとんどない。今は書店流通を通して写真集を売るのはかなり難しい。基本は手売り。そのため規模が小さく、小回りがきいて直販の販路を持っている出版社だけが写真集を出版している。最近では、手軽に誰でもオンライン印刷で写真集を制作できるから、作るのは簡単になった。でも売るのは難しい。本屋さんに写真集を置いてもらうことで売れるという時代はとうに終わって、個人的なネットワークで広げることが重要になってきた。SNSやYoutubudeで3万人以上のフォロワーがいる人なら、300部くらいはすぐに捌けるから、一部からでも注文できるオンデマンド印刷を使って定期的に出すことも可能だ。以前は写真集を出すことで存在を知ってもらうことができたが、今は認知度が高い人でないと写真集も流通できない。良い写真集(歴史的に残す価値がある)と、売れる写真集はイコールではない。でも売れないと残ることも難しい。

 

<2013年9月10日の日記から>

 しまなみ海道に入ってからはずっと雨。しまなみ海道の大島に2泊し、尾道に渡った。映画でよく知る町だが、来たのは初めてだった。ケーブルカーに乗ってお寺を見て、街並みを散策しようと思ったら雨。傘をさしていても濡れるくらいだ。そうなるとアーケード街を行ったり来たりくらいしかできない。せっかくここまできたから、ということで雨を承知で鞆の浦まで車を出した。宮﨑駿監督が長逗留してポニョが生まれた港町だ。尾道から1時間くらいで着く。運よく雨が上がり歩くことができた。20年前に来たかったなあ。その間、尾道はずっと雨だったらしい。翌日は尾道から島根に抜けるつもりだったが天気予報では山陰地方は大雨注意報が出ている。しかたがないので一日早く戻ることにした。尾道から神戸に寄ってギャラリータントテンポに行き、名古屋で友人とご飯を食べるつもりが、どうやら雨雲と一緒に動いてしまったようだ。高速道路でものすごい豪雨になって、前が見えないほど。まるで川の中を走っているようだった。神戸をあきらめ、名古屋に着いたら携帯に「緊急避難情報」が。今すぐ避難しなさいって言われても着いたばかりだし。なんとかホテルに入るも、友人との夕食会は当然中止。翌日東京に戻り11日間の旅は終了。結局晴れたのは火、水、木の3日だけ。全走行距離2500キロ。車で四国まで行けたので九州も大丈夫なんじゃないかと思った。月曜日、撮影した22本の現像が上がった。25本かと思っていたら22本の数え間違いだった。ベタ焼き作ってじっくり見る。いつもと同じようなものが写っている。意識は変えたつもりでも体は変わらないというか。2枚くらい残れば上等。

 

1年ぶりのdp2

朝=マグロの漬茶漬け/夜=新高円寺の香味園

毎年ワークショップのグループ展を渋谷のルデコでやっていて、数年前からその中で「フォヴィオン会」といのが生まれた。シグマのフォヴィオンセンサー縛りで撮影されたものをプリントして展示するもので、20名近くが参加している。しかし現在フォヴィオンセンサーのカメラのdpシリーズは生産が中止されていている。にもかかわらず人気があって、しかも現行のクアトロよりも一世代前のメリルをわざわざ中古で探して買っているのが多い。僕もその会に参加しているので、展示のためにプリントを作らなくてはならない。なので毎年この時期になるとdpクワトロを引っ張り出すことになる。今回はdp2を使うことにした。45ミリ相当の画がちょうどいいし、写りもシリーズ4機種の中で一番素直。各自の自由な展示の他に、フォビオン共通課題があって、今年のお題は「室内」。なので家の中を連日撮り回っている。カメラの液晶モニターではわからないが、パソコンで確認すると、相変わらずすごい写りをしていて驚く。RAWで撮影して調整が必要だと言われているが、ただ画像を開いて保存するだけで、すごい絵ができてしまう。他のどのカメラとも違うからファンが多いんだろうね。新型センサーのフォヴィオン機が開発中ということで「フォヴィオン会」もまだ存続できそうだ。エプソン  のプリンターでA3ノビプリントにしてみた。その出来上がりにひさしぶりに「俺って天才」って思った。

 

<2021年9月9日の日記から>

水曜日はいつも夜8時からライブ配信なので、ご飯は夕方5時に食べるのが習慣になっている。割と軽めの丼ものを作ってもらうことが多いのだけど、妻が所用で2日間家にいないので、自分でご飯を作る。作ると言ってもかなり手抜きだが。冷蔵庫に炊いた玄米があったので、二日間チャーハン。それもカップヌードル塩を使ったもの。一時Youtubude紹介されてバズったやつ。まずカップヌードルを容器から出してジプロックに入れて叩いて砕く。一人前の場合は半分の量でいい。一度容器に戻してヒタヒタになるまで水を入れてふやかしておく。フライパンに油を薄く引いて溶き卵とご飯を投入。軽く火が入ったら先程の戻したカップヌードルを投入し炒める。これだけで信じられないくらいパラパラで美味しいチャーハンができる。適当に野菜を入れればお店レベルのものができてしまう。一人前でカップヌードル半分なので2日間作ったわけだ。ライブ配信では「ユージン・スミス展」のことについて話す。壁を塗ってカメラアングルも変えての配信。以前のアングルとどっちがいいかな。背景の青い壁にもう1灯足したいところだ。そうなるともっといい感じになるはず。


<2005年9月9日の日記から>

朝ヨーグルト、昼お蕎麦、夜少なめアルコール抜き。という生活を10日続けたら身体に変化が出てきた。まず疲れない。歩くのが平気になった。今日も中野まで30分の道のりを歩いた。中野での用事が済んだところへギャラリーパストレイズから「馬場さんのプリントが用意できた」と連絡があった。横浜では遠いので、丸の内パストレイズで引き取ることにしていたのだ。中野から東京駅までは電車で一本、早速引き取ることにした。丸の内パストレイズは、取り壊される予定の八重洲ビルの地下に、来年5月までの期間限定でオープンしている。以前レストランがあったところだ。広くて雰囲気がいい。馬場さんのプリントを確認して引き取る。早くじっくり見たい。額はどうしようか。木製でもいいな。そのまま銀座へ。「銀一」でEOS5Dの予約を入れる。10月中旬になりそうだという。そこから銀座ニコンサロン歩く。銀座ニコンサロンは場所が変ってから足が遠のいていたところだが、編集者のタカザワさんが「とてもいい」とメールをくれたので行くことにした。中込 コイチ写真展「ストリートプレッシャー 」。会場は20数枚の大型インクジェットでプリントされたモノクロ写真が並んでいた。内容もさることんがら、大きさがとてもよかった。ストリートの緊張感が見えてくる。すれ違いざまの一瞬を掠め取るのだが、中込さんの写真に暴力性は感じない。大げさに言えば愛を感じるのだ。作者に話を聞いたら、やはり先月日記に書いたストリートスナップの鈴木さんと旧知の中だと言っていた。二人ともきちんと東京を撮っている。会場に流れていた映画「タクシードライバー」のサントラが東京の写真にあっていた。嫌いだった銀座ニコンサロンがとてもよく見えて、思わず会場貸し出しのための申込書をもらってきた。いいものを見たので調子付いて目黒美術館市民ギャラリーに「第4回プリンターズ展」を見に行く。写真のプリントを専門に職業にしているプロフェッショナルプリンターたちの集まりで、一人の写真家の同じネガを、それぞれの解釈でプリントしている。プリンターの解釈によって表現される意図すら変ってくる面白さがある。「この焼き方好きだな」と思うと必ず「大場あすか」と名前があった。トーンの好みが一緒のようだ。一度プリントをお願いしてみたくなった。

1億画素

朝=鮭の玄米パスタ/おやつ=焼きそばパン半分/夜=マグロの漬丼、味噌汁

水曜日はライブ配信。システムも完成し、音問題も完璧にクリア。ところが準備段階では問題なかったマイクを繋ぐミキサーが突如壊れた。配信まで20分を切っている。最初は電池切れだと思っていたが、交換しても電源が入らない。慌てて代替えのものを繋いだが、ちょっとだけノイズが乗ってしまう。今年の1月に買ったばかりのもので、まさか故障するとは思わず保証書が見当たらない。どこにやったかなあ。

配信はなんとかできた。内容は写真展を二つ紹介して、最後に新進作家展のこと。配信で何度も「個人の好き嫌いじゃなくて、現在の写真を東京都写真美術館はこう考えているということ」と言っている。どうしても写真というと「記録」という要素だけに引っ張られてそれ以外のことが語られることはほとんどないから、新進作家展はいい企画だと思う。

自分の配信が終わってからハッセルブラッドの新製品発表のニュースを上田家のライブ配信で見た。上田晃司さんは数少ないハッセルを仕事に使っているプロだし、何よりいつもすごく丁寧に解説してくれるので多分公式より見やすい。1億画素、7段分の手ぶれ補正、高性能AF、瞳AF対応、内蔵メモリ1テラ、新設計レンズ3本。さすがDJI、盛り込んできた。この性能だと「1億画素とかいらない」とは言えなくなるよな。これは早急に触ってみたい。値段はライカM11と合わせてくるんじゃないかと考えるとボディが日本円で120万円くらいになるんだろうか。レンズは1本40万円? 円高がかなり影響してくるのは間違いないね。

 


<2021年9月8日の日記から>

写真家ユージン・スミスがジョニー・デップ主演で映画化され、9月末から公開される。それに合わせるようにお茶の水の「ギャラリーバウハウス」でユージン・スミスの写真展が7日から開かれている。初日に見に行ったのだが。なぜフィルムと印画紙でこれだけの情報量が出せるのか不思議でしょうがない。ユージン・スミスのモノクロプリントは印刷では絶対にわからない。何度か美術館で見ているがその度に驚く。それが今回の展示では70点もまとめてみることができる。文章でプリントの凄さを言ってもしょうがないので、これは見に行くことをお勧めします。地方から出てくる価値があります。そしてギャラリーだからプリントを買うこともできる。それが彼自身のプリントにもかかわらず20万円から40万円なのだ。映画化されるほどの作家の代表作プリントが40万円で買える。他のジャンルでは考えられない。2年前にYoutubeで配信を始めてから、ずっと部屋の壁を塗りたいと思っていた。そしてついに部屋の一面を濃い青緑に塗った。今回はひとりで。リビングと玄関の壁を友人に手伝ってもらって塗った経験から、養生さえしっかりすれば大丈夫だということがわかったのでチャレンジしてみたのだが、なかなかいい感じに仕上がった。水曜日のライブ配信は今までとちょっと違ったアングルにしようと思っている。

 

<2017年9月8日の日記から>

エリックの写真集に「明天会更好-明日よくなる」というのがあったなあ。月曜日までそこにいたのに。朝起きても家の中は静かだ。家の中にいると、特にひとりでいるのが辛い。妻と美術館やギャラリーをはしごする。食事も外食ですます。娘も仕事から家に帰って来たくないという。脳は開いた穴を、なにか物質的なもので埋めようとするようだ。妻は携帯を変え、僕は前から気になっていた富士フィルムのスクエアチェキを買った。6.2センチ角の正方形チェキのプリントは、6センチ角のローライで撮ったカラーベタのサイズとほぼ一緒。馴染みがある。こういう時はネットショッピングではダメで店舗で買わなくてはならない。新宿ヨドバシに行って価格交渉をして買うことを楽しんで手に入れた。すぐに喫茶店に入り箱からカメラを取り出してセッティング。フィルムを入れて向かいに座る妻を撮ってみた。暗い店内なのにとても発色がいい。ちょっと広角な画角も使いやすいし、かなり寄れる。でも感度は固定式のようで、そんなに高くない。デジタルカメラとインスタントカメラのハイブリッド(古い表現だなあ)で400万画素のデータが残る。そのくらいで十分だ。16ギガのメモリーを入れれば1万5千枚撮れる。カードの交換とか消去とかしなくていい。家に帰ってチェキを触っていると「ああ、もっと早く買っておけばあいつを撮れたのになあ」とまたメソメソするのだった。

すごいことやってる

朝=ひき肉のスパイスソースのソーメン/夜=レンコンとカボチャのきんぴら、ゴーヤときゅうりと鶏肉のサラダ、豚と大根でルーロー飯、豆腐とワカメのお汁

毎年、東京都写真美術館で新進作家展をやっていて、その年の写真の動向を見るのに重要なものになっている。木村伊兵衛賞の前哨戦的なところもあり、昨年新進作家展に選ばれていた吉田志穂さんは今年の木村伊兵衛賞を受賞している。その新進作家展がヤバいという噂を、始まる前から聞いていた。すでに写真ではないと。全ての展示が「じゃない写真」らしいのだ。9月2日から始まっているので、早速行ってきた。噂は本当だった。見ていてニヤニヤがとまらない。面白すぎる。これは全写真関係者必見。東京都写真美術館は写真を捨てたのだ。すごいことやってる。キュレーターは若手だろうな。これが2022年の写真だというメッセージだ。おそらく非難殺到だろう。だって、写真じゃないんだもの。『じゃない写真』を書いた身としては「ですよね」という感じ。写真は拡張している。それを認識すための新進作家展ということだ。7日(水)の2B Channnelのライブで取り上げるつもり。

 

<2021年9月7日の日記から>

今まで頑なに日記とSNSを連動させていなかったけど、試しにしばらくの間Facebookに繋げてみることにした。2日間やった結果は、ほとんどページビューは変わらないということ(笑) 。20年間続けているけど日記をたくさんの人に見てもらうというのはなんか変な感じ。8月から過去日記も一緒に載せている。15年前のことでもかなり覚えているものなのだな。最近は午前中に映画を見ている。本日は「インターンシップ」。Google社の採用を目指したコメディ。多様性の重視がテーマ。それと、最近はまっているのがアニメ「Sonny Boy」。絵を見てあっと思ったのが「これって江口寿史の絵だ」ということ。案の定キャラクターデザインがそうだった。Amazonで8話出ているけど、徐々に面白くなっていく。設定も謎だし、状況説明もない。一話ごとに話が飛ぶ。楳図かずおの「漂流教室」みたいなものだ。哲学アニメというか不条理ものというか、時間や空間の複層性の話しなんだけど、社会制度や生きる意味とかも含まれている。でもちゃんと面白い。9月の一押し。

 

<2006年9月7日の日記から>

九段下にある東京国立近代美術館で、「所蔵作品展 近代日本の美術」と題した収蔵品展をやっている。その写真コーナーで、北井一夫さんの「村へ」のビンテージプリント26点が展示されている。ずっと見たいと思っていたが、月曜日はお休みだし、午後5時でおしまいだし、なかなか行く機会がなかった。ようやく今日撮影の帰りに寄ることができた。昨年開催された木村伊衛兵展の時に数点、別コーナーで北井さんの「村へ」が展示されていて、そのプリントの強さに驚いた覚えがある。今回は26点と、一コーナーを使っての見ごたえのあるものだった。「村へ」は、近年あらたに北井さん自身が再プリントしたニューバージョンを一通り見せてもらったが、やっぱり当時プリントされたもののほうがいい。近代美術館の常設展には、他の写真も多く展示されていた。その中で一番驚いたのがスティーグリッツが撮影したオキーフのヌードと、手が写ったものの本物が展示されていたことだ。この2点は昨年の海外オークションで、それぞれ1億円以上で落札されている。キャプションボードには「オキーフ贈」とあった。どういう経緯で収蔵されたかは知らないが、まさか今回見れるとは。特に手の写真がいい。人の肌の美しさを感じてしまう。ついでだからと見た企画展「モダン・パラダイス」は見ごたえ十分の大満足。これまた写真の展示も多い。クーデルカのプリントが1点あった。初めてオリジナルを見た。近代美術館おそるべし。見終わって出た頃にはグッタリとなった。昨日といい、今日といい、東京に住む喜びを感じてしまった。

僕も46歳だ

朝=冷し中華/夜=高円寺「フジ」の定食

9月6日(火)から銀座キヤノンギャラリーで小澤太一写真「赤道白書」が開かれるという案内をもらったので、2B Channnelでインタビューさせてもらうことにした。赤道をまたぐアフリカの国々を撮ったもので、モノクロでまとめられている。会場まで行って収録して、帰宅後すぐに編集して、小沢さんにチェックしてもらって、翌日公開というスピードでアップできた。「小澤太一インタビュー」

https://youtu.be/08RGFE0ABVU

最近、45歳くらいの人と縁がある。小澤さんも46歳だそうだ。先日コラボライブ配信した鈴木心さんも、鈴木麻弓さんもそうだし、そのほかにも45歳の人が周りに多い気がする。自分が45歳の時と、彼らは圧倒的に経験値が高くて驚く。しかし考えてみれば僕が45歳の時に同年代でものすごい経験をしている人はたくさんいたはずで、でも彼らとは接点がなかっただけなのかもしれない。僕はその頃何をしていたんだろう。そうだ冬青で初めて写真展を開いたんだ。そこがスタートだとすると、普通は30歳がデビューだから僕は人より15年は遅れている。ということは今、僕は46歳ということになる。

 

<2021年9月6日の日記から>

zoomによる美術史講座(有料)4期目が始まった。今回は近代から現代にかけての部分をフランス・ソルボンヌ大学で美術史を学んだTさんに、前回の講座の資料と録画した動画を見てもらったことで、より正確な情報を伝えることができるようになった。初回の講座の質問タイムでは、こちらがタジタジなるような鋭いものが多くて面白かった。土日の午後は学生たちとZOOMでやりとりするのだが、以前も書いたけど、ひとり面白いのがいる。彼の写真の傾向から、志賀理恵子の写真集『螺旋海岸』を進めたのだが、今ではもう品切れで版元の赤々舎にも在庫がなかった。それを、学生でありながら18000円出して中古で買ってしまった。しかも副読本の「螺旋海notebook」まで買って読み込んでいる。彼と「志賀理恵子とは何者か」ということで盛り上がる。こんな話ができるのは写真関係者でもかなり少ない。僕は写真にできることは「伝える」ことと「残す」こと、それに「考える」ことだと思っていて、現在「伝える」という点においては以前のような強さはかなり薄れてきた。あとは「残す」と「考える」で、この二つは意外と密接に関わっている。現在を残すことで考えることができる。この辺りを今の学生に伝えているのだが、なかなか難しい。「伝える」写真の方が明快でやっていてスッキリするからね。

 

<2012年9月6日の日記から>

昨日は田原総一郎氏、今日は船橋洋一氏の話が聞けた。世界はこうなっていたわけね。10月1日からはネパールだ。何のカメラを持って行こうか。実はライカMモノクロームを3日間だけ借りて使った。M9をモノクロモードにすれば一緒じゃないか、と懐疑的だったが結論からいうとスバラシイ。シャドーの粘りがいいとかハイライトがどうだとか、高感度が使えるとか、そんなんじゃなくて、撮影していて気持ちがいい。M8、M9をモノクロモードにした時は使える機能の制限、という気がしていたがMモノクロームはモノクロしか撮れないというのがいさぎよさいい。時間がなかったので、夜に駅から自宅まで撮りながら帰ったのだが、面白くていつまでたっても家にたどり着かない。もし、いきなり年収が10倍に増えるようなことがあれば(写真集が売れるとかね)絶対買う。普通のM9じゃなくてモノクロームのほうがいい。だって古くならないんだもの。モニターは相変わらず見づらいし処理速度も遅いが、そんなの些細なことだ。ライカのM型がなんでいいかといえば、ピントがきっちり合うことだ。開放で撮っても驚くほど合っている。感度を1600〜2500にすると、ノイズではなく粒子が出てくるのに気がついた。これが美しい。しかし、いかにスバラシイとはいえ軽自動車一台のカメラを買うわけにはいかない。ネパールに何を持っていくかは当日の朝まで決まりそうにない。

 

2回のプレ講座も無事終了

朝=あんかけ玄米パスタ/夜=ナシゴレン、豆腐とカボチャのスープ

半日かけて横浜のギャラリーに出すグループ展用のプリントを額装する。ローライ+ネガカラーで撮影したプリントをひとつの額に2枚づつ配置。今年冬青でやった『午後の最後の日射』と同じ形だ。2セット計4枚を新たにプリントし直す。当初はシールの超光沢ペーパーでいこうと思っていたが、結局バライタにすることにした。タイトルは「日傘を差す女と夏の日のフラクタル」。

夜、プレ講座の2回目配信も無事終了。と思いきや、録画を忘れていた。幸い音声だけは別撮りしていたので、そこにパワポをかぶせればいいのだが。編集が大変そうだなあ。2日間で300人の視聴があった。視聴いただいた皆さま、ありがとうございます。プレ講座としては過去最高だった。両日とも講義後の質問が多く盛りだくさんな講座になったと思う。あとは来週11日(日)から第6期「美術史講座」が始まる。ただいま絶賛募集中です。

https://satorw.hatenadiary.com/entry/2022/08/29/171644

プレ講座は夏休みの宿題みたいなもので、それが終わってようやく通常モードに戻る感じだ。

 

<2021年8月5日の日記から>

前回の「2BChannnel」ライブで「コダクローム」の話をしたら「さようならコダクローム」という映画があると教えてもらった。Netflixに上がっていたので、一度退会していたのだがアカウントを作り直して朝ごはんの後に見た。コダクロームは、1936年にコダックから発売が開始された世界初のカラーフィルムで、第二次世界大戦中から使われ、2000年までは多くのカメラマンが愛用してた。感度は低いのだが、色が濃くて独特の発色をする。ソールライターの赤や黄色は、まさにコダクロームの色調だ。しかし通常のカラーフィルムと全く構造が違うため、現像機が特殊で日本では2箇所でしか処理ができなかった。そして2010年12月30日、カンザス州のドウェインズ・フォトが世界最後のコダクロームの現像を終えた。映画は有名カメラマンの父と音楽プロデューサーの息子のロードムービー。冒頭に『イージーライダー』の腕時計を投げ捨てるオマージュがある。写真好きなら間違いなく楽しめる。最後の方に、現役のマグナム写真家、スティーブ・マッカリーが実名で出てきた。故人を葬るときに、カメラマンが列をなしてストロボを焚いていた場面はグッときた。これは戦地で亡くなった報道カメラマンに向けて行われるものだ。僕が最後にコダクロームを使ったのは2001年7月のニューヨーク。9.11のほんのちょっと前。もう20年前だ。今でも家に1本だけ未使用のコダクロームがとってある。

 

<2003年9月5日の日記から>

ああ、毎日ダラダラとしてます。8月はあんなに忙しかったのに9月の声を聞いた途端にぱったりとヒマになってしまった。どこか行こうかと思っていたが、なんだか気乗りせず江古田でゴロゴロしていた。半年ぶりくらいにパチンコに行ったら3万5千円も儲かってビックリ。消えてなくなる前に速攻で焼肉を食べに行く。はじめの2日くらいはジタバタしていたが、4日目になってもうダラケがしみてしまった。そんなだらけた毎日にぴったりきたのが須藤真澄の『おさんぽ大王』というコミック。本屋に積んであった8巻目をなにげなく手に取ったらツボにくるものがある。試しに買ってみたら完全にはまった。翌日「大人買い」で全巻を揃えてしまった。コミックを買ったのは久しぶりだ。西原理恵子以来だな。『おさんぽ大王』は、ほのぼの西原という感じか。とにかく今の気分にぴったりだった。ダラダラも悪くない。