温度差

朝 ナッツ入りベーグルにブルーチーズ、豆入りトマトスープ

夜 豚肉とゴーヤの生姜焼き、キャベツと切り昆布の和物、白米、野菜の味噌汁

 

江東区区民センターでやっている「エイトバイテン展」に顔を出す。この展示には僕のワークショップ「2B&H」に参加した人も多くいる。見に来てくれた人の中にも、ちらほらと「2B&H」の人たちがいて、ついつい話し込む。彼らは社会人で写真を趣味にしているわけだが、中には個展を開いたり、写真集を出版したり、国内外のコンペで賞を取ったりと、その活動に刺激を受けることが多い。16年もワークショップを続けてこれたのは彼らのおかげ。

よく「最近はワークショップやっているんですか」と聞かれるのだが、コロナ禍となり昨年4月以来中止したまま再開の目処は立っていない。来年にはなんとかしたいのだが。

 

そのかわり新しい試みとして、11月にやるルデコグループ展の学生限定枠に16名が集まったので、4月から彼らとオンライン講義と個人面談のワークショップをやっている。でも、授業ではないから参加している学生に温度差がある。というか3分の2は音信不通状態(笑)。こちらもまったく矯正はしていないのだが、最初の顔合わせ以来、一度も顔を見ていないのが多くいる。

毎週水曜日の21時からは全体向けのzoom講義、土日はzoomと対面の講座のために時間を作っているのだが、顔を出す学生はいつも同じ。やっている方としては顔を出してくれる彼らに救われている感じがある。

「オンライン中心だからかなあ」と思うことはあるが、一度だけ北海道の方々を中心に、6回連続でやったzoomオンライン写真講座は盛り上がったし、その経験から学生相手をやろうと思ったのだが。

まあ11月の展示が近くにれば、駆け込みで来るんだろうな。学生の頃、僕もそうだったもんな。

なんであの時もっと先生と話をしなかったんだろう? 自分のやり方にこだわって、人の意見を聞くのが嫌だったんだよなあ。今の学生だって同じなんだよな。

でも、やっていて思ったのだが、僕が彼らを変えることはできないけど、彼らによって自分が変っていくのは強く感じる。

 

すごい展示を見た

朝 バインミー

夜 豆鯵のマリネ、きゅうりとミョウガの梅酢和え、かぼちゃとナスと鳥そぼろ煮もの、雑煮

 

風呂上がりに体重を測ったら、ついに59.9kg。60Kgを割ったのって、仕事を始めてから一度もない。体脂肪率17%だが若干内臓脂肪があると出てくる。今まで履いていたジーンズはウエストがブカブカ。体重が軽くなったので歩いても疲れない。

でも、これ以上体重が減ると、それはそれで心配になる。とはいえ不摂生して太るというのも変だし。

 

六本木のギャラリーに古賀学さんの展示を見に行く。実を言うとそんなに期待して見に行ったわけではなかったのだが、会場に入って驚いた。これはすごい。インスタにもちょっと上げたけど、今日の2Bchannelの配信で詳しく取り上げることにした。

帰りがけにギャラリー冬青へ。今月は竹谷出(いずる)写真展をやっている。中国を撮ったモノクロプリント。

高橋社長がいたので2時間くらい話し込む、というか今抱えている冬青の問題を聞かされる。経営者というのは心労が絶えない。よく「渡部さんのお知恵を貸してください」と電話があるけど、僕のアドバイスとか役に立つわけないので、毎月顔を出して話を聞く役になっている。

今日僕が話をした中で高橋社長が大きく頷いたのはふたつ。

 

「好きなことで生きていくとか言うけど、それより嫌なことで死なないようにしましょうよ」

「人間っていう字は、人の間って書くけど、一番ストレスになるのは人と人の間に立つことなんだと思うよ」

これ、どこかで聞いた受け売りだけど、今の社長には刺さったみたい。

エンディングの曲が頭の中でループしている

朝 リンゴ

昼 ベトナム麺のパッタイ

夜 鶏肉ニラ玉ねぎの黒酢炒め、サラダ、赤飯、豆とトマトのスープ

 

午前中にヨドバシカメラに行って冷蔵庫を買う。まさか一年で二度も冷蔵庫を買うことになるとは。娘が引っ越しをして新生活を始めるのでそのお祝い。

他にも買ってやると言っているのに「いい」と断られた。

子供の頃から毎月のお小遣いをあげたことがない。お年玉も。もちろん必要なものは買い与えていたけど「お小遣いをくれ」と言われた記憶がない。たまに祖父母からもらっていたが、中学生の頃から自分で作ったケーキを知り合いの喫茶店に卸していたり、高校時代はパン屋やステーキ屋でずっとバイトしていた。

お金に関しては我々夫婦よりよほどしっかりしている。

 

その後「Imax新宿」で再び『シンエバンゲリオン』を見た。今度はドルビーサラウンドの迫力映像だ。600円高いのけど、元の料金が60歳以上1200円なので問題ない。

先週月曜日に初めて見て以来ずっと『シンエバンゲリオン』が頭に残っていて、この1週間は、ずっと過去作と関連動画を見続けた。前回は何も知らずに見たので、今回は背景やら世界観を詰め込めるだけ詰め込んで見た。

お陰でほとんどの伏線は回収できたし、物語にもついていけた。でも残念ながら一度目の痺れるような感動は味わえなかった。

なぜ前半の村での暮らしをあんなに丹念に描いたのかだけは伝わってきて、何度でも見たくなる。できればそこだけ見ていたい。なぜ綾波レイがあんなにも人気があるのか全体を通して見てよくわかった。


そして今回、僕は完全にシンジではなく、父親ゲンドーの目線で映画を見ていた。多くの少年の物語は、「彼が属している社会から逸脱し」、「旅の中でふたり(三人)の友人と出会い」、「特別な力を魔法使いによって与えられ」、「二度の試練と三度の克服の末に元いた社会へ帰る」というのが原則のようになっている。そこには「権力の象徴である父親殺しのメタファー」が根幹にあると言われている。

『シンエバンゲリオン』においても同じ構成になっていて、劇中の台詞にも「子どもが父親にできることは、肩を叩くか、殺すことしかない」とあった。

「ああ、僕は今や殺される立場なんだなあ」と思いながら見ていたわけだ。

にわかファン

朝 寝かせ玄米のトマトリゾット、茹で卵

昼 茹でとうもろこし

夜 大根おろしうどん

 

先週『シンエバンゲリオン』を見てからずっと気になって、ネット配信で観れる旧作のエヴァは全て見た。ついでに第一作となる『海からきたナディア』や『シンゴジラ』も。

解説動画(中田敦彦のものは4時間もあった)も見て、おおよその世界観がわかった。これでもう一度見に行ったらどう感じるのだろう。

1995年に始まった『新世紀エヴァンゲリオン』から見ている世代には、特別なアニメなんだろうなということがよくわかった。

映画見に行ってよかった。これを逃していたら一生関わることはなかったはず。僕に新しい「推し」ができた。安野秀明は1960年生まれ、同世代の監督が作るものをこれからも見ていくことができる幸せを手に入れたことになる。

同じようなことを編集者でありライターの渡邊浩行さんが言っていた。2Bchannelの「プリントを買う」という回で、渡邊さんが「同世代の作家プリントを買うことで、彼と時代を並走できる」と言っていた。彼の言葉で、僕もまったく同じ思いでプリントを買っていたのに気が付いた。そして今回、そこにもうひとり増えたわけだ。

次回作が『シン仮面ライダー』に『シンウルトラマン』。これって1960年代生まれのものにとって、たまらないコンテンツだよなあ。

カラーフィルムがいらなくなる?

朝 梅おかかのおにぎり、味噌おにぎり

昼 阿佐ヶ谷「ちもと」で蕎麦

夜 自家製寝かせ玄米でカレー

 

体脂肪を測れる体重計を買ったので、風呂上がりに測ってみた。

体重60.7kg  体脂肪18.4 %  体内年齢っていう項目があって「59歳」って出た。喜ぶべきか、悲しむべきか、なんか普通。

2度目の自家製「寝かせ玄米」は前回より美味しくなって、カレーと相性が良かった。

 

10日から東陽町の江東区区民センターで「8x10連合組合」のグループ展が始まる。来週15日まで。12日(月)はお休みです。

今回は横木安良夫さんも参加していて、横幅2メートルもあるプリントを展示していた。

横木さんに「カラーフィルム使ったんだ」と聞くと、ニヤリとして「これもとはモノクロだよ」と言われて驚いた。人着というのが、プリントに絵の具で色付けをしているわけではない。自然な仕上がりというか、カラーフィルムで撮られたとしか思えない。これをレタッチでやろうとしたらとてつもない労力がいる。

横木さんが「知らないの? 新しいフォトショップに追加されているよ。AIがモノクロに色付けをしてくれる。すごい簡単」と教えてくれた。

知らなかったー。画素数が4倍になる「強化」というモードは試していたが、実はそのほかにも、いろいろAIモードが追加されたようなのだ。Youtubeで使い方を調べたら本当に簡単、クリックひとつで色がつく。空だけドラマチックなものに置き換えたりもできる。

これはやってみたい。モノクロデータなら山ほどある。30年前に撮った南の島のシリーズ「午後の最後の日射」をカラー化したら新シリーズになるかもな。

 

グループ展に参加する理由はこうやって新ネタを仕入れられることにつきる。気になった作品を作者に解説してもらえるのは、生の知識として残るから。

ピンホールで撮られた作品やカラーフィルムで撮られた作品にもすごいのがあった。

展示を見ていると「血中写真濃度」がどんどん上がっていく。

水温24℃ 現像時間9分

朝 そぼろ冷やし蕎麦

昼 梅おかかおにぎり

夜 いわし・キャベツ・オクラの玄米パスタ ポテトサラダ

 

またしても緊急事態宣言。おかげで仕事が飛ぶ飛ぶ。仕方ないが、自営業は大変。8月いっぱいスケジュール詰め込んでいるけど大丈夫かいな、、、

 

金曜日は「暗室の日」に決めたので暗室に行ってフィルム現像。今日は溜まっていたブローニーフィルム7本分。

決めたので、考える必要は無くなった。「なぜ暗室に入るのか、何をするのか」は問題じゃない。暗室に入って修行のように作業する。考える必要がないのは楽。40年間、暗室作業をするためにフィルムで写真を撮っていたし、これからもそう。

60歳になるちょっと前から残された時間について、強く意識するようになってきた。今までにみたいな過ごし方は、もったいなくてできない。だから、なんでもかんでも習慣にして行動するようになってきたわけ。

「なんで20歳の頃にもっとやらなかったんだろう」って今頃になって思う。ということは「なんで60歳の時にやっておかなかったんだろう。あの頃は体も動いていたのに」って、後あと絶対に思うはず。

 

暗室からの帰り道はいつも「なんか今日頑張ったな」って思える。そう思えるとビールの味も格段に良くなるのだ。

インスタの面白さはまだわからないけど

朝 キビの麺に「ヨコイのソース」

夜 飛び魚の干物、水菜と白滝の炒め物、カボチャの煮物、納豆、白米、豆腐の味噌汁

 

「長月」でコーヒー飲んでから銭湯へ。体重を計ったら60.9kg で血圧は91-61。

夜はひさしぶりに白米を食べた。やっぱりうまいわ、納豆と白いご飯。

 

インスタはフォロワー600人になった。投稿数は41。フォローしている人も同じく600人。

「広告」っていうタブがあって「なんだろう」と思っていたらタイムラインに「広告」って表示される投稿が結構ある。つまりお金を支払うことで拡散してくれるというわけだ。

試しにすでにアップしていた「ロンボク島の3人の少年」の写真に広告をつけてみた。6日間で3000円。

結果は1万人に表示され「いいね」が約500、保存が34だった。これが3000円の価値があるかどうかはわからないけど、確かに通常の投稿で「いいね」は100くらいだから増えていることには間違いない。登録者も6日間で150くらい増えた。

 

数日前に僕の写真集『demain』をインスタ上で全ページ公開した。以前は「Google +」というサービスでこれまで出した5冊の写真集すべての画像を公開していたのだが「Google +」のサービスが突如なくなってしまった。

今回インスタにアップしたら、すぐに特装版の購入希望者から連絡がきて、やりとりしているうちにプリントも買ってもらえることになった。とてもうれしい。

「インスタ経済圏」と聞いたことがあるが、確かに訴求力はあるのかも。TwitterとFacebookはうまく活用できなかったけど、YouTubeと Instagramは続けていけそうだ。

 

 

 

カメラは機械ものの中でいちばん長生きだそうだ

朝 ライ麦パンのバインミー

夜 自家製寝かせ玄米でカレー、オクラとパプリカのオイル焼き

 

よく日記のメニューに出てくる「寝かせ玄米」とは、玄米を炊いた後、保温状態で3日間ジャーの中で寝かせた後に食べるもの。なんか良い現象が起きるらしい。

家で作るにはハードルが高いので、パック入りのものを買って温めて食べていた。これがお赤飯みたいにモチモチしていてとてもおいしい。でも1食300円もするので、これでは続かないから家で作ろうとなったのだが、3日間放置したご飯ってどうなの?って思ってしまう。

白米なら絶対パサパサになってしまうだろうよ。それに梅雨のこの時期に3日間放置ってねえ。おそるおそる食べてみたらそんなにパサパサはしてない。でもモチモチではない。ということで要再検討。

 

毎週水曜日20時からの2Bchannelライブは毎回ネタをどうするか悩む。前半の「まくら」はだいたいカメラの話。

昨日は買ったばかりの「オリンパスOM1」だった。帰り道の電車が中野止まりだったので、そこで下車して「フジヤカメラ」へ。

メイン館の手前に「ジャンク館」があって、変なものが転がって

いる。カメラも保証書なし、返品なしで並んでいる。

そこでパッと目についたのがOM1のボディ。4000円の値札が無造作に貼られていた。手にしてみるときれいだし、シャッターもいい感じ。機械式だから電池がなくとも動く。なんと露出系も動いた。まあ、使わんけど。

でもレンズがないとなあ、と思って横を見ると35-70ミリのズームレンズが。「ああ、これ高校生の頃に欲しかったやつだ」。レンズをつけてファインダーを覗くと懐かしい見え方がする。そのレンズは、僕が18歳の時は3万6千円したけれど、値札には「700円」とあった。

家にはフィルムが山ほどあるので、その山を崩すべく4700円で購入。メイン館を見ることも忘れて家路についた。テーブルに置いてあるだけでいい感じ。

空シャッターを切ると高校時代を思い出す。

シン・エヴァンゲリオン

朝 米粉の大根おろしうどん

夜 お寿司

夜食 あんぱん

 

自粛期間が過ぎたし映画を観たいとずっと思っていた。ようやく時間が取れたので新宿三丁目のバルト9に「シン・エヴァンゲリオン」を観に行った。

僕はエヴァ世代ではない。テレビ版『新世紀エヴァンゲリオン』が始まったのが1995年だから、僕はすでに34歳。DVDが話題になっても、まったく見る機会はなかった。

なので何ひとつ設定を知らない。キャラクターの関係性も分からない。友人によると、観に行くなら、少なくともこれまでのエヴァンゲリオン映画版三作をネット配信で見てからの方がいいと言っていたが、結局見ずじまい。何の予備知識もなく映画館に行った。

 

結論。予備知識とかまったく必要ない。ストーリー展開が問題ではない。後半僕は口を半開きにしてスクリーンを見ていた。ラストシーン、不覚にも感動してしまって体が痺れた。

ここで僕が映画の解説をしてもしょうがない。でもひとつだけ感じたのがこれは「シン自由・平等・博愛」なんじゃないだろうかということ。犠牲による救済が再生を生んでいく物語。

なぜこんなすごいものを作れるのだろうか? 宮崎駿がダヴィンチなら、弟子の安野秀明はラファエロか?

すごいものを見てしまった。稀にアートに触れたとき、見る前と見た後では、自分の中の何かが変わってしまう感じがすることがある。それと同じ感覚が「シン・エバンゲリオン」にはあった。

この映画、もう一度観に行きたい。

120万円の投資だった

朝 イワシと野菜のベーグルサンド

夜 新高円寺「香味園」


僕が結婚したのは1990年。つまりバブル絶頂期ということだ。前年の1989年12月29日に株価は3万8957円にまで跳ね上がっていた。

フリーランスになったのが1987年だから、運がいいとしか言いようがない。選ばなければ仕事はいくらでもあったし、意外かもしれないが、翌年1991年から景気は一気に後退してバブル崩壊と言われたが、仕事には全然影響なかった。

 

でも写真の仕事、クリエイティブとか言われる職業には厳然たるヒエラルキーが存在していて、予算があって大きな仕事は、それを動かす人の周りにいないと一生回ってこない。

たとえば雑誌の表紙にタレントを起用する場合は、その雑誌の記事ページで一生懸命仕事をしているカメラマンが撮るのではなく、表紙のアートディレクターが連れてきたカメラマンが担当する。だから、表紙でタレントを撮るには、やり方を変えなければ、そこの撮影は貰えないということを、仕事を始めてから気がついた。

 

さて、どうやって今の枠から抜け出して、上のレイヤーのカメラマンになれるのだろうか? 結婚した頃の僕はまだ雑用のような撮影仕事ばかりだった。

この時、アシスタントをしてこなかったことを後悔した。まったく「ツテ」がないのだ。先生がその界隈にいるのなら、自分を知ってもらうチャンスもあるし、どういう仕組みで動いているのかをリスクなしで見ることができたはずだ。

やってこなかったことを悔やんでもしょうがないので、まず友人の水谷充のスタジオに毎月10万円を払って事務所を間借りさせてもらった。バリバリの広告カメラマンだった水谷くんのそばで、彼の仕事の作り方を横で見るためだ。そのための投資が毎月10万円だった。

それから1年間は、撮影から現像、打ち合わせの様子や企画書、請求書の書き方まで、カメラマンで生きて行くためのことがを全部と言っていいほどのことをみた。アシスタントだったら3年はかかるところを、120万円払って1年で教えてもらったのだ。

 

彼のやっていることを真似ているうちに仕事内容は劇的に変わっていった。今思えばこれは投資だったんだな。

 

「プアハウス」

朝 イワシの玄米パスタ

おやつ ふかし芋

夜 玄米雑穀ご飯のカレー

 

インスタに1本の動画をアップした。2分ちょっとの短いもので、江古田にあった喫茶店「プアハウス」の店内の様子だ。

撮影したのは2018年の9月くらいだったような気がする。

お店がなくなる直前のことで、動画を撮っておこうと携帯で撮った。Youtubeを始める前だったが、ちょっとだけ動画に興味を持って、ジンバルを購入したので実験的に撮影してみた。

それが結果的に最後の映像になってしまった。

 

「プアハウス」という店名の由来がアップダイクの小説『老瘋院の祭り(プアハウスフェア)』から来ていることを最近になって知った。

「プアハウス」のことは、何度も何度もこの日記に登場するが、僕は19歳の時から閉店するまで、40年間も通い続けた。

大事なことは全部ここで教えてもらった。大学卒業後もこのお店に通うために江古田に住み、事務所も江古田に構えた。すべて「プアハウス」ありき。僕が食べることが好きになったのも、ワインを飲むようになったのも、古い家具に囲まれて暮らしているのも、もとをただせば全部ここ。

最初にお店に入った瞬間「懐かしい」と感じた。理屈なしに馴染んだのだ。学生の頃は大学にいる時間より、ずっと長い時間をこのお店で過ごした。11時の開店から閉店までいることも珍しくなかった。そんな人たちがたくさんいて、彼らからいろんなことを教わった。昨年亡くなった水谷充くんもそうだ。

 

カレーを食べてコーヒー飲んで漫画を読むのが、何よりの幸せだった。そして時折顔を上げてカウンター越しになんでもない話をする。

「プアハウス」がなくなってしまったという残念さを思うことはなくて、反芻するようにかつて存在した時間を思う。そのとき、ふわっといい気持ちになれる。

 

 

 

 

 

 

 

懐かしさに隠されているもの

朝 大根おろしうどん

おやつ シュークリーム

夜  野菜とカツオのソテー、ジャガイモとアボガドの和物、キャベツサラダ、寝かせ玄米ご飯のワンプレート

 

以前「ノスタルジー」についてずっと調べていた頃があって、その時に「戦後の数学者、岡潔の『春宵十話』というエッセイ集がいいよ」と教えてもらった。

読んでみると難しいのだが、確かに面白い部分がある。特に「真理に触れたときに人は懐かしいと感じる」と言う部分だ。「あ、これわかる気がする」と思えた。

確かに初めてあったのに「懐かしさ」を覚える人もいるし、カメラでもそうだ。新しいのにずっと使っているような気がすることがある。

 

岡潔という人は天才的な数学者でありながら「情緒」という言葉を何度も使うのも不思議だった。

そして彼は、美は眼前にあるとも言っていて「言葉で美を言い表すことはできないが、美を前にすると誰もが気づく」と書いている。そしてそこには懐かしさが伴うとも。

 

これはiPadのメモ帳に書き留めてあったものを「岡潔」で検索して見つけたものだ。

なぜそんなことをひっくり返して見ているかというと、学生と森山大道について話している時に「そういえば」と思い出したのだ。

現在公開されている森山大道のドキュメンタリー映画のタイトルは「過去はいつも新しく、未来はつねに懐かしい」だ。これは彼の著書からきているもので、その言葉に岡潔の言葉が重なってくるのだ。

 

「真理や美は懐かしい」というのは、言葉で「分かる」というのとは違っていて「腑に落ちる」というのがしっくりする。脳じゃなくて腹というか腸で感じるもの。最近では腸でも感情を感じていることがわかっている。

言葉で説明することが難しい部分を「懐かしい」という言葉に置き換えているんじゃないだろうか。

 

もうかれこれ8年も「ノーモアノスタルジー」を引っ張ってるな(笑)