日本の新進作家vol.15

東京都写真美術館(現在ではTOPミュージアム)では、毎年12月に新進作家展が行われる。常勤キュレーターが毎年持ちまわりで一人で作家を決めているそうだ。

新進作家だから、まだ知名度は低いが、この先写真界を担っていく存在だと思える人たちを選んでいる。つまり日本写真の世界の未来予想図が見える展示なわけなので毎年見に行っている。

今年のテーマは「小さいながらもたしかなこと」(英題はThing So Faint But Real)
作家は森栄喜、ミヤギフトシ、細倉真弓、石野郁和、河合智子 の5人。
https://topmuseum.jp/contents/exhibition/index-3098.html

“本展では、「小さいながらもたしかなこと」をテーマに掲げ、自らの感性や考え方、アイデンティティやリアリティを手がかりに、社会との関わりを意識しながら個人的な視点で作品を制作する5名の作家をご紹介します”(TOPミュージアムのサイトより)

5人の作家の中で4人が海外の美術大学出身で、細倉真弓のみ日本大学芸術学部写真学科卒だが、その前に立命館大学を出ている。いずれも純粋培養の写真家ではない。

会場は仕切りによって、5人のブースが単独で分けられている。観ていて、流れの延長上に別の作家の作品が目に入ることはない。特徴的なのは4人の作家が映像を使っていることだ。

ただし、メイキングのような写真作品の裏側を説明するものではなくて、並列にセットしてある。そこに意味を求めても無駄だろう。写真が平面で静止しているものというのも、幻想になりつつあることを物語っているようだ。

美術館における企画タイトル、今回で言えば「小さいながらもたしかなこと」は、キュレーションするうえで大きな意味を持つはずだ。
前回の同館で行われた「アジアンコンテンポラリー」でも家族、地域などの極めて限定された空間における私的なことを通して、我々の物語に繋げていこうとしていた。
しかし今回の展示と大きく違うのは、作品におけるテキストが一切ないこと。「アジアンコンテンポラリー」では大きな物語にするためにテキストを用い、状況を説明してきた。それが今回は一切ない。説明する行為を拒否しているように見える。

この流れはいつから起きたのか確かめるために、ブックショップにあった過去の図録を6年分買い込んだ。

企画タイトルと作品の変遷を見ていくことによって、写真の流れが見えてくる気がする。