駅からの帰り道に銭湯があるので風呂に入ってから帰宅

11月のギャラリー冬青は、スイス人のヨン・アーウィン・シュタヘリ。冬青でやるのは4回目となり、僕は一度トークショーのお相手をしたこともあるのでお馴染み感がある。

スイスのバーゼルに住んでいるが、1年のうち3ヶ月はオーストラリアの採掘場にサファイアを掘りに行く仕事をしていて、9ヶ月はスイスに戻って作家活動をしている異色のアーティストだ。

冬青の高橋社長から電話があって「彼がお台場のデジタルアートミュージアムに行きたいと言っているから案内して」と頼まれた。どうやら冬青の作家が順番でお相手しているようだ。

僕も海外で展示をするときに、向こうの関係者がいろいろ案内してくれたり泊めてくれたりお世話になっているので、ここは手伝わなくてはならない。贈与されたことに対しての返礼が生まれたのだ(笑)

 

平日だというのにデジタルアートミュージアムは結構混んでいた。7月に行ったときと内容が変えてある。外国人の姿も多い。ネットで情報が流れているんだろう。

光が錯綜し、音が絶えず鳴っているので酔った感じになる。彼もそうだったようで音についてのことで話で盛り上がった。たとえば、

 

「単調な音の繰り返しは心を安定させると同時に、ちょっとでも自分のリズムと違うと急に耳障りになる」

「踊りや演奏のシーンと音が完全シンクロしているのは気持がいい」

「映像プラス音は情報過多になることが多い」

「波のグラフィックの部屋は素晴らしかったが無音であって欲しかった」

「ミュージアムのカフェにも音はいらない」

 

ヨーロッパの作家と話をしていると、こうした音についてのことに言及する人によく会う。音がこちらの感情をコントロールしてしまうことに対して違和感があるようだ。

アーウィンさんは、ミュージアム内のカフェが一番面白かったようだ。器の中のお茶の上に、花の映像がマッピングされるのだが、カップを動かしても映像がついてくる。けっこう不思議な体験なのだ。

彼はちょっと年上だが結構話が合う。僕が今年ビルの建て直しで暗室がなくなってしまって困っていると話したら、アーウィンさんも昨年まったく同じ理由で暗室をなくし、今年ようやく新しい場所を見つけたと言っていた。以前の暗室は、真っ暗闇でもどこに何が置いてあるか全部分かったのに、新しい暗室は小さくなったしまだ慣れないとも。

 

帰りは新宿エプサイトで稲田 弥恵 写真展「猩々蠅(しょうじょうばえ)の囁きに 耳を傾ける」を観てきた。

脳についての研究をしているラボの写真で、猩々蠅が主役。アメリカドラマのCSシリーズみたい。厚みのあるアクリルを使った展示が数点あって、これが標本のような、琥珀のような感じがしてよかった。作者は研究員だそうで、これが日々の仕事場なんだとか。

別れ際、「東京にいるとたくさん歩く」とアーウィンさん。

思わず「エクザトリー」と声をあげてしまった。