ベートーベン交響曲第7番からの手嶌葵 あげてさげる

昨日は56歳の誕生日だった。

会社を辞めフリーランスのカメラマンになったときに先輩から「フリーランスは前の10年でやってきたことで次の10年を生きる」と言われた。これは数少ない僕の信条になっていて、アシスタントにはよくそのことを言っていた。

ほとんどの場合フリーランスに長年続くルーティンの仕事はないし、クライアントも数年単位で変わっていくものだ。長くて10年というところだろう。もし切れずに増え続けていったとしたら、それはそれで大変なことになる。御殿は立つが体がもたない。

フリーランスは一番良かった頃を忘れられないので自分を過大評価しすぎるところがある。昔話は得意だが、将来のことを話すのは苦手。明日が分からないのがフリーランスだから(笑)

10年前というとアルルに初めて行ったのが2007年。振り返ればあれが分岐点、いやその前の年の冬青での個展が変わり目か。もっともそれはその前の続きであって、降って湧いたようなものではなかった。

僕の場合前の10年はここの日記ですぐに振り返ることができる。良いことも悪いこともだいたい詰まっている。

そういえば昨年の夏あたりに感じていた訳のわからない不安からはようやく抜け出すことができた。今思うと不思議な感覚だった。体の変化が気持ちにまで作用していたかもしれない。量子論までかじったのは、その状態から抜け出したかったからだ。

外国の友人へのメールにこう書いた。日本語では言えないことも英語なら言えたりする。

I became 56 years old yesterday. I am still positive.