トークショーでは、観客の一人をプロジェクターの反射光を使ってポートレート撮影するサプライズもあった。

アレック.ソス。

ちょっと変わった名前の写真家が今世界で注目を浴びている。

最年少でマグナムの正会員になって、出す写真集はあっというまに売り切れ、無表情の全身ポートレートと、風景とアブストラクト(抽象的)なものを組み合わせたソススタイルは、ここ数年写真のスタンダードになっているところがある。

その彼が来日して様々なイベントを行うというので、昨日スライド&トークショーに行ってきた。

彼はレビューサンタフェでアワードを獲り、その後大きく活躍したとあって向こうでも話題に上ることが多かった。僕はお土産代わりに現地の写真集専門の書店「Photo eye」でソスの写真集を2冊買って帰った。

1冊は、いわゆるソススタイルになる前のモノクロスナップのストレートな写真だ。これがなかなか面白い。ちょっとナイーブというか、ガンガン攻める写真ではない。

経歴としては最初は彫刻を専攻していて後に大学の授業がきっかけで写真を始めている。意外とも思えたのがロバートフランクに大きな影響を受けていると言っていたことだ。

トークショーの中で記憶に残ったのは、

「移動が大事。物理的な場所の移動も、写真の中の視線の流れも」

「アメリカを撮る。しかし海外にも行く」

「写真の並べ方には自分だけのルールがある。並べられた1枚目と2枚目には隠された共通点が潜んでいるが、あえて説明はしない」

「最初はポートレートを撮るのが苦手でガールフレンドしか撮れなかった。訓練としてまず子供を撮り始めて、その後はあんまり怖そうじゃない人を選んで撮影していた」

「本にするのが好き。出版社の社長でもある」

「(ソスと言えば8X10のカメラを使うことで有名という前提で)今回は8X10のカメラを持ってきたのか?という質問にに対し、僕が8X10のカメラで撮ったシリーズは2つだけ。プロジェクトに合わせてカメラは変えていく。今回はデジタルカメラ(会場に持ってきていたのは八セルのHシリーズだった)だし、先月旅行に行ったときはディスポーザルカメラ(使い捨てカメラ)だった」

「プロジェクトありきで写真を撮る。大きなものだけでなく小さなプロジェクトもたくさん行う」

「写真の制作を行うにはまずは訓練が必要で、全てをコントロールできるようになったら肩の力を抜いて撮る。”マッスルメモリー”を身に付けるにはおよそ10年が必要と言われているが自分もそうだった」

「卓球が大好き。日本でも卓球大会をやるから皆来てね。大きなトロフィーも用意したから」

今世界でもっとも注目度が高い写真家のトークショーということで、どんな難しい話になるかと思ったら、普段自分が考えていることと似ていて驚いてしまった。しかも卓球好き。写真の質問じゃなくて卓球の質問したほうが喜んだに違いない。

ソスはとてもフレンドリーらしく、ショーが終わっても丁寧に質問に答えていた。

卓球大会行ってみようかな(笑)