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新国立美術館へグルスキー展。

1枚の写真では史上最高値(2012年落札当時3億3千万円)の作家グルスキーの日本初個展ということで話題になっている。世界でもっとも有名な現代写真家のひとりだ。

2001年MOMAの大規模な展示から日本でもグルスキーのことを耳にするようになり、僕は2006年東京国立近代美術館でのドイツ新興写真のグループ展で初めて目にした。

今回の展示では最高額で落札された「ライン川」を見れるのかと期待していた。あるにはあったのだが、幅数十センチの小さなサイズでの展示でちょっと肩すかし。

以前は8x10インチの大型カメラを使って撮影し、現像後フィルムスキャンでデータを作り、加工後銀塩プリントしていると聞いていたが、現在では中版デジタルカメラを使っているそうだ。

初めてグルスキーの写真を目にしたときは、まだデジタル写真という発想が自分の中になかったので、写真が持つコントラストと彩度の高さを不思議に思っていた。当時のアシスタントが「なんでこんなにピカピカしているんですか?」と聞かれて答えに窮した覚えがある。

最初期からデジタルを積極的に利用した写真家で、「ライン川」も対岸の建築物は後処理で消していると解説にあった。

年代ごと、シリーズごとではなく、インスタレーションに近いランダムな構成になっている。

なぜかほっとするのが2000年以前のデジタルを多用していない作品だった。予想通りのすごい展示だったが、不思議と感動はなかった。

その足で竹橋の国立近代美術館のプリントスタディへ。今回はエドワードウェストンの息子ブレッドウェストンの作品を見せてもらう。

エドワードウエストンは写真の教科書の最重要ポジションを占めるくらいの大御所。次男エドワードは写真の才能を受け継いだようで、小学校を出るとそのまま父について撮影旅行を重ねていたそうだ。父と息子が同じカメラを使い、同じ場所でアングル違いで撮影しているものが残されている。

インタビューを読むと父親をとても尊敬していて、お互いが理解者であり、父親はブレッドのことを「ブラザー」と呼んでいたとあった。

ちょっと衝撃的だったのが「父はずっと貧乏で、僕はそれになれてしまった」ということが書いてあったこと。

教科書に載るほどの作家がずっと貧乏だったというのだ。

このプリントスタディというシステムは素晴らしい。額やガラス越しではなく、生のプリントを直に触れんばかりの距離で見ることができる。この生を見る体験は美術館で見る写真とまったく違うものだ。

そういえばグルスキー展では床の線が引いてあるところより前に出ると警報音がピーピーなる、皆細部を見たいからついつい近寄りたくなるのだ。

竹橋から神保町まで歩いて檜画廊「V.S神田写真展」へ。田中長徳、飯田鉄、中藤毅彦、石川栄二、森田剛一。「神田」がテーマだ。中藤さんが声をかけてのグループ展だそうだ。

行ったらちょうど飯田さんの8ミリ上映会が始まるところだった。懐かしの秋葉原鉄道博物館を7年目くらいに撮ったもの。フィルムはトライXでモノクロ。なんてことないムービーなのだが、8ミリの魔法によって怪しく動くからついつい引き込まれる。

1巻につき3分。現像代は5000円、ハワイに送るんだそうだ。

田中長徳さんの20代と思しきポートレートがあったり、各作家にオマージュをささげた当時のRCプリントは面白い。高梨豊「東京人」へのオマージュはほぼ同一ものといっていいくらい。

飯田さんとプリントの話になって、飯田さんはとにかく小さくてもいいからプリントに残すようにしていると言っていた。だからこういう機会はプリントを整理制作する上で貴重だとも。

家に帰ったら仕事の印刷用デジタルデータ作り。2Bで受けたフォトショップ講座が役にたっている(笑)