ライカM9を借りて早3ヶ月。「脱デジタル、銀塩で生きていきます宣言」しちゃった方が「使ってていいですよ」と貸してくれたのだ。
しかし仕事で借りているなら全然気にしないで使うのだが、個人のものはどうにも気になって外に持ち出せず結局家の中で試し撮りだけになっていた。
ライカMが発売になって撮り比べが各誌に出ている。センサーにCMOSを使うMとCCDのM9では根本的な写りが違う、はず。と思うのだが、印刷ではあんまり変わりがないような。
もはやCCDを使った個人用のデジタルカメラというのは存在しないんじゃないだろうか。あったとしてもコンパクトカメラくらいか。
ところがフェーズワンやリーフといった高性能デジタルバックはいまだにCCDを使っている。ペンタックス645Dもそうだ。コダックか、イスラエル製のダルサというメーカーのものが多い。
CCDに比べて省エネで発熱も少なく、ゆえに高感度性能にも部があるCMOSが主流になるのは当然で、わざわざCCDを使う必要はないように思えるのだが、フィルム世代の我々にとっては低感度で使ったときのCCDの発色は捨てがたいものがある。
コダックCCDの生産が終了したことで、最後のコダックCCDのM9の再評価が始まっていると耳にした。面白いことに、ここにきて初代M8の人気が高くなっている。ローパスはもちろん、赤外線カットフィルターもないM8は他にはない写りをする。特にモノクロ描写はM9よりいいという人が多い。
土日の2Bは、ワークショップ終了後にいろんな人がやってくる。プリントを見せに来たり、写真展のDMを置きに来たり、ただ遊びに来るのも多い。新しいカメラを買った時はとりあえず見せに来るのは、もはやお約束みたなものだ。
M8を持っていたはずの人がスチールグレーのM9に買い換えたとやってきた。DMを持ってきた人の鞄からはM8が出てきた。となると撮り比べが始まる。どうも男というのは子供の頃から「比べっこ」が好きなようだ。カタログのスペックを見て比べるだけで興奮する。なのでカメラ雑誌はそこを煽るような企画ばかりだ。
M8とM9のシャッターを押してみてすぐに分かるのが押し込むときの感触とシャッター音の大きさ。8000分の1秒があるM8と4000分の1秒のM9では、シャッター幕のテンションが違うから高速側をあえて捨てたM9の方が柔らかくて静かなシャッター音だ。
同じレンズをつけて発色を見るとM9が驚くほど素直な色なのが分かる。M8のくすんだ感じを好きという向きもあるだろうが、一般的にはM9だろう。
そのとき使ったレンズがフォクトレンダー HELIAR classic 75mm F1.8。これがかなりいい写りをする。M9との相性がいいのかもしれない。75ミリというと本家ライカのズミルックス75ミリF1.4があるが、フォクトレンダーのコストパフォーマンスは最高。http://kakaku.com/item/K0000139954/
ズミルックスよりもフォクトレンダーのほうがいいという大御所写真家もいるそうだ。
触っているうちにM9がだんだんよく思えてくるぞ。
「買っちゃたらいいんじゃないですか」とけしかけられたが、それには「よし娘の後期の授業料を突っ込むか」といったら引いていた(笑)
次の日からおそるおそる借りているM9を外に持ち出している。撮ったデータをPCで見ると「ほお」と唸るものがある。200パーセントまでアップにしても線が崩れないというか。いやいやそれだけじゃないな。
「ほお」としか言いようのない写りなのだよ。