昔オーディオの撮影をしていたことがあって、1週間くらいスタジオにこもっていた。
その間担当者はずっとCDやレコード、当時まだあったカッセトテープをとっかえひっかえ音源を変えて音のチェックをしていた。毎日8時間以上音を聞いていたことになる。
さて明日から週末という金曜日の夜、仕事もひと段落した担当者に聞いてみた。
「Sさんってお休みの日はなにしてんの?」
「週末はずっと家のオーディオで音楽聞いてる」と嬉しそうに彼は答えた。
ええ、こんなに聞いててまだ飽きないの!!!驚きというより呆れてしまうばかり。そんなにオーディオ好きなんだ。
「渡部さんは?」と聞かれて口に出たのは。
「プリントしようかなって思ってる」
Sさん大笑い。一緒じゃない。
昨日はやることもないから買い物にでも行くかと自転車を走らせたのだが、途中で冬青の前を通ったらちょうど展示の準備をしているのが見えた。中に入ると社長と作家の瀧澤さんもいた。
瀧澤 明子 「りんごの間」が今月の展示だ。30点のモノクロ。東北のイメージだ。
瀧澤さんはロンドンに住むテイトモダンギャラリーのスタッフでもある。テイトモダンは今年ウィリアム・クライン✖森山大道をやっていたところだ。
せっかくだから瀧澤さんにヨーロッパの写真事情を聞いてみた。
モノクロはフランス、オランダでは確固たるポジションがあるがイギリスは難しいとか、コンセプト重視の作品作りのこととか面白い話がたくさん聞けた。
ちょうどそこへ亀山仁写真集「THAKASHI」の校正を持って高橋社長がやってきた。「渡部さんどうですか?」めずらしく社長が弱気に見えた。
校正紙を1枚1枚見ていくとなぜ弱気なのかがすぐ分かった。「社長、今回難しいんでしょう?」
「そうなんです、どこを落としどころにしていいのか迷っていて。久しぶりに難しい写真集です」
亀山さんは2006年以来ずっとミャンマーを撮り続けて今回写真集にまとめることになった。同時に今年7月に冬青で写真展を開く。
6年間分のたくさんの写真から80枚で構成しているからコントラストに差が出てしまっているのだ。僕も最初の写真集でその経験がある。その時も8年間分100枚の写真で構成していた。
ただ、社長が悩むのはいいことだ。とんでもない解決策を見つけてデメリットと思われることがその写真集の特徴にしてしまうからだ。
散々写真の話をして満足してギャラリーを後にする。そのままフジヤカメラに行って小一時間。
結局休みの日も写真のことばかりなわけだ。