鯵の開きを焼かないで素揚げ。頭からバリバリ。

その日2本目の仕事は、東京江戸博物館の中にある旧日本橋を再現した場所で、二人の人物撮影をするという無理難題に近いものだった。

博物館に行った事のある人は分かると思うが、橋の上には、まったくといっていいほど照明がない。肉眼では人物の顔がうっすらとしか確認できない。

しかも照明を焚こうにも近くにコンセントはない。延長ケーブルとしてドラムリールを用意してはいたが、営業時間中の撮影だからコードを伸ばすのは人が引っ掛けるので危険だ。フィルム時代ならまったく無理だがデジタルカメラなら照明がなくてもなんとかいける。

アングル探しをすると橋は相当上から見ないと橋として認識できないのが分かった。橋のあちこちから見るのだが、どこからも橋が橋らしく見えない。

リクエストは人物二人を橋の上に前後に離してて立たせたいという。使用ページは見開きの予定。ということは双方にピントを合わせるため絞りをかなり絞らなければならない。

さて困った。

撮影ポジションを高くとれば人物を前後に離してもある程度ピントがかせげる。橋自体が奥まで見えるというメリットもある。博物館の広報に頼み込んで、大型の脚立を倉庫から持ち出すことができた。

橋の前に脚立を立ててカメラのファインダーを覗く。コンタックスディスタゴン25mmがちょうどよさそうだ。

背の高い脚立に乗ると三脚がポジションまで届かない。手持ちではISO感度を上げても対応しきれそうにない。なので脚立に三脚の脚の2本分を乗せて使うことにした。少々心もとないがこれで4分の1秒は切れる。

絞りは俯瞰で見ているため、F5.6でほぼパンフォーカスにになることが分かった。

なので4分の1秒で絞りF5.6で写るようにISO感度を設定することにする。結果ISOは1600で撮れることが分かった、

EOS5DMark2の場合、1600の感度は十分許容範囲内だ。

アシIを橋の上に立たせて何度も位置を確認する。

別室での対談が終わり、スタッフがやってくる。撮影開始。

橋の上のすでにチェックしてある所定の位置に人物を配し、ライブビューでピントチェック。なんとかなりそうだ。

編集者が二人がかりで客足を止め、その間にちょっとづつアングルを変えどんどんシャッターを切っていく。

10分弱で1カット目終了。後は個人個人を撮影。

終了後少々グッタリ。しかしこの後事務所に帰ってから後処理をしなくてはならないのだ。