写真展3

六本木から早稲田へ。軽くご飯を食べてバー「26日の月」へ。

安井みゆき写真展
『Midnight in the dark』
Gallery Bar 26日の月 2010/9/16-2010-9/30
火曜〜土曜18:00-26:00
日曜18:00-24:00
月曜定休日
http://www2.ttcn.ne.jp/~moon26/

彼女は2年間ずっと夜の写真を撮り続けている。アルルや東川のポートフォリオレビューも経験し作品を形にまとめる時期にきていた。

この展示の準備のため2Bの暗室に毎週入り浸りの状態だった。夜の写真は黒の占める面積が多い。以前の彼女のプリントは闇を大事にしすぎるあまり暗く沈んだものが多かった。「もっと細部を出せば」と言っても黒の締りが出ないからイヤダという。

しかし今回はバーでの展示、彼女もさすがに心配になって会場に写真を持って行って見え方を確認したらしい。結果「見えない」ことが分かった。

ペーパーをコダックからフジに切り替えたことをきっかけに明度をあげてプリントするようになってきた。フジの色の出方とコントラストと相まってプリントは以前より格段に「見えて」きた。見えたことによって闇が失われないことを彼女自身が気づいたようだ。

バー正面に展示されている写真は闇を捕えているが対象は浮き出て見える。

彼女と話していてひとつ面白いことに気がついた。「東京以外で撮らないの?」と聞いたら「外国で夜は危ないですよ」と言う。そりゃそうだ、女性が一人夜の街を歩ける場所など日本以外では考えられない。これが仮に男性なら東京でも間違いなく通報されるだろう。昼間にカメラを提げて撮影しているだけで職質される世の中なのだから。東京でなくて地方はどうかというと街灯の数が少なくて撮影には向かない。

つまりこのシリーズは街灯がたくさんある東京で、女性のみが撮れるモチーフなのだ。

キャプションにMidnightは夜の1日の終わりであり始まりでもあるとあった。深夜駅から家に戻る間、夜の街を彼女の写真の目で歩いてみた。

家からこぼれる明かりが意外と道を明るく照らし、街灯が予想以上にまぶしいくらいだ。植木に光が当たり、シャッターの扉が怪しく光る。ほのぼのともしない代わりに闇がもたらす狂気もない。いや、どちらもあるとも言える。

今日から明日に変わる頃に家に着いた。門扉には街灯の明かりが強い影を落としていた。