スイカの厚

スーパーで特売750円の大玉スイカ一玉を買ってきた。小玉スイカはスイカじゃない気がするし、カットで売っているのは論外だ。スイカは玉に限る。

一晩冷やしたスイカをできるだけおいしく食べたい。できれば昼間がいい。食後のデザートではなく、汗をかいた後にかぶりつきたい。プールに行った後というのが王道だろう。

まだクーラーが普及していなかった昭和40年代、家の窓は開け放たれていて、縁側から風が吹いていた。あの頃縁側で食べた食べたスイカはおいしかった。

大人になるにつれスイカを食べる機会は減り、おいしいと感じることもなくなってきた。

もう一度おいしくスイカを食べたい。この夏のプロジェクトだ。この場合スイカの質もさることながら状況も大事な要素になる。

借家の玄関先には小さな庭がある。アボガドの木がそびえているのだが無駄にでかいだけで実はならない。ひと夏ほっておいたら辺りは立派なミニジャングルができあがっていた。なんとかしなければと思いつつ、この夏の暑さに見て見ぬふりをしていた。

ひらめいた。これは使える。思いっきり汗をかけて、しかも生産性がある。

炎天下、長袖、長ズボンに軍手、首には保冷剤入りのタオルを巻いて庭に立った。とりあえず根こそぎ草を掘り起こし、絡まる蔦類をむしりとった。

汗が顔からプツプツと丸く吹き出てくる。目の中にも容赦なく入り込む。腰をかがめ、時にははいつくばって草と格闘する。働いている感じ満載だ。

1時間半を過ぎたあたりで頭に血が上ってきたのを感じてきた。熱中症第一波のようだ。刈り取った草を一箇所に積み上げて本日は終了。

全てを脱ぎ捨てて風呂場に向かいシャワーを浴びる。喉はすでに渇ききっている。そこで冷蔵庫からスイカが登場。四分の一にカットすると、それをキッチンの流しの上でかぶりついた。

うまい、甘い、冷たい!ジャクッ、ジャクッと音が体の中に響く。顔中汁だらけにして、食べているんだか飲んでいるんだか分からない状態になってくる。

食べ終わると流しで顔を洗いタオルでゴシゴシとふきあげた。

ふぃ〜。

今年初めて夏らしいことをしたな。