春が来たようだ。

あっというまに日本からカラー印画紙が消えた。アナウンス翌日には全てのお店の棚から黄色の箱がなくなった。いったいどういう人が買い込んでいるんだろ。

ある情報によれば業務用のロールペーパーはそのまま生産されるので、需要があればカットして販売もありうるということだが、コダックが「工場閉鎖」としているだけに、どこまで信じていいのか分からないところだ。

今年の木村伊兵衛賞が高木こずえになったのはとても興味深い。とうとうデジタル作品での受賞となった。今までアウトプットはデジタル出力であってもインプットは銀塩であり、言わば「ストレートフォト」だった。

そこへデジタルでの合成を軸に考えている作品を「写真」として日本の写真界が認識したのだ。彼女の作品は5年前なら「写真ではない」とされていたはず。

今一番気になるのは「何が写真なのか?」ということだ。僕が学生の頃は「印画紙に定着されたものが写真」という厳然たる定義があった。カメラを使わないフォトグラムという作品形態もあるがそれも印画紙に定着させている。

2005年を境にインクジェットでの作品製作が急速に増え、以前なら美術館での展示にインクジェットプリントはタブーであったのに関わらず、名だたる美術館が相次いでインクジェットプリンを認めるようになっていく。もちろん東京写真美術館もだ。

今まで写真はイメージをカメラとフィルムと印画紙によって規定されてきた。見たようには写らないのが前提で、まして感じるように写るなんて幻想だった。写真を撮るものは常に「受け入れの気持ち」を要求されつづけてきた。

そけへフォトショップが現れた。CS5ができることといったらめまいがしそうだ。http://www.youtube.com/watch?v=dgKjs8ZjQNg

もはや「こうしよう」という発想があったらできないことは何もない。カメラすら要らないかもしれない。IMAGE TAKER であった写真家の仕事はIMAGE MAKER へと変わっていくのか。

今月23日から渋谷ルデコでワークショップ2Bのグループ展を開催する。そこでもポケットフィルムから11×14インチのカメラ、ハイエンドデジタルカメラによるメーター級の展示、レイヤー合成やステッチングの作品まで、もちろんモノクロバライタ印画紙によるプリントもある。

何が写真で何が写真ではないのか。「私は写真をこう考えている」と言い切れるものだけが写真家と呼べる時代になってきた。