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ギャラリー冬青でアーウィンさんとのトークショー。予想通りサファイヤ採掘の話で盛り上がった。彼は9ヶ月をアーティストとしてスイスで暮らし、残りの3ヶ月はオーストラリアでサファイアを掘って暮らしている。

オーストラリアは個人レベルで宝石を採掘できる世界で唯一の国らしく、アーウィンさんは、写真家になったときから15年間ずっとサファイア堀と写真家の人生を送っている。

3ヶ月間のテント暮らしは自然とともに生きていることを実感できるというが、サソリも毒蛇もいるような過酷な場所だ。20歳台なら話も分かるが、彼は僕より5歳も年上。今年で53歳になる。

直径1メートル30センチくらいの穴を4メートル縦に掘って、その後横穴を掘っていくそうだ。表現に「クロール」と言っていたから横穴はかなり狭いはず。機械を使えない手掘りのライセンスのため一日に30センチしか掘れない。水を買いに行くのも100キロ離れた村までいかなければならない。

興味はやはりいったいどのくらい儲かるか?彼が掘った中で一番大きかったサファイアは、ちょうど親指の先くらい。買い取り価格は日本円にして200万円くらいだったそうだ。コンスタントに一日3万円は掘れるらしい。

最初の頃は3ヶ月掘って何も出なかったこともあったと言っていた。でも15年も続けているのだから割りに合う商売なんだろう。

彼は40歳になるまで土木技師として働いて、蓄えを残した後、写真家として活動する人生を選んだ。欧米には意外とそんな写真家が多い。渡邊博史さんも同じようにビジネスの世界から写真家になっている。アルルでも50歳近い写真家がたくさん新しいチャンスをもとめてやってきていた。

3ヶ月稼いで9ヶ月を写真を撮って暮らす。いい響きだ。

トークショーの通訳は井本さんがやってくれたのだが、僕の質問を英語にしてもらったのをその場で聞くのはとても参考になった。ああ、こうやって質問するのか、と感心しきり。

たまにアーウィンさんと英語でコショコショっと会話を交わす。井本さんが彼の話の通訳をするまえに大きく頷く。

この様子を見て「渡部が英語を喋っている」とザワザワしているのが面白かった。

実を言えば彼の言っていることは7割くらいしか分かってません。井本さんの通訳でなるほどね、と思ってました。

でもリアクションは随分上手になりました(笑)