肉豆腐、サーモンとアボガド、鯵と野菜のサラダ

僕にはアシスタントの経験がないから師匠と呼べる人がいない。学校でもいい生徒ではなかったので恩師と呼べる人もいない。

でも大学の4年間結構まじめにクラブ活動をやっていたのでいい先輩には恵まれた。

体育会系のしきたりが残る時代だったから1年生は完全に使いぱしりのようなことをする。合宿ではユニフォームを洗ったりジュースを買いに行かされたり、思えばわずらわしいことが多かったはずなのに楽しかったことしか憶えていない。

一人暮らしを始めて外食の仕方が分からず栄養失調になったりインフルエンザで倒れてアパートから動けなくなったり(当時アパートに電話はなかった。それが当たり前だったのだ)そんな時助けてくれたのもクラブの先輩だった。

ご飯の食べ方、奢ってもらった時のマナー、挨拶、酒の飲み方、博打。大人になるために必要なことを全部教えてもらった。フリーになってからは仕事のない僕をディレクターになっていた先輩は安くこき使うことなく正規の価格で仕事をふってくれ、請求書の書き方までも教えてくれた。

だから今でもその先輩に頭があがらない。48歳になろうというのに未だに学生の頃と同じような感覚で接していて自分で可笑しくなる。

今日久しぶりにその先輩と仕事ができた。今の僕は何の仕事をするかより誰と仕事をするかの方がずっと大事になってきている。信頼する人との仕事はすっきりした気持ちになれる。