写真展のはしご。

神楽坂の『アユミギャラリー』早稲田の『ビジュアルアーツギャラリー』青山の『ラットホールギャラリー』を見て回った。

ラットホールでは深瀬昌久の「鴉」をやっている。12日までの開催ということで、ようやく間に合った。1970年台後半からカメラ毎日に不定期連載されていた「鴉」を僕はその時に見ている。

当時僕はまだ高校生。雑誌見開きで掲載された、夜、木の上で休むカラスの眼だけが怪しく光る写真を見て、なんてきれいなんだろうと思った。あれから30年。初めてプリントを見たが、美しさは何も変わっていなかった。写真家瀬戸正人が焼いたモダンプリントは、30年を越して輝きを放っている。1点50万円のプライスがついていた。

いいものを見た。当然写真を購入。1000部限定。おそらくもうすぐなくなってしまうだろう。

アユミギャラリーはいつ行ってもほっとする。展示はキューバの写真だが、町のスナップショットだけでなくボクシングというテーマが隠されている。カラープリントは1メートル以上に伸ばされている。キューバンカラーが鮮やかだ。カラーとモノクロをうまく使い分けている。

ビジュアルアーツギャラリーは人の勧めで見にいった。若手写真家のリレー個展で、今回は山形 優 写真展『日に暮らす』だった。

いつもどおり、はじめはキャプションを見ずに順路に従って一周し、また反対に戻るように見る。家族を扱った写真のようだが、なんだかギクシャクして見える。

キャプションを読んでそれがどこから由来しているのか理解できた。とてもいい文章だった。評論家高橋周平氏のものだ。文章が頭に入ってから見ると見え方がまるで違う。ちょうど家族間の問題で揺れている自分を照らし合わせて見てしまった。

今、母親を米沢から東京に連れてこようか真剣に考えている。無理は承知。考えているよりずっと大変なのは分かっているのだが。なんとかしたい。

ずっと自分勝手に生きてきた。そろそろ人のために生きてもいいころかもしれない。家族の在り方をこの年で初めて意識した。遅いね。