河豚のあら煮

上海から写真家の海原修平が帰国していた。会おうということになり、銀座で待ち合わせた。となると待ち合わせ場所は「レモン社」ということになる。実に久しぶりにレモン社に行った。

ちょっと早めに行って店内を物色する。もはやハッセルなど捨て値で売られているかと思いきや、意外といい値段をつけている。SWCなど未だ30万円以上だ。M型ライカも高い。唯一安いな、と感じたのはライカの一眼レフR7。7万円くらいでたくさん転がっていた。R6.2が17万円くらいだからR7の安さが目に付いた。

一通り見終わった頃に海原さんが現れた。胸には35ミリフィルムを使うスクエアサイズカメラ「ロボット」が。さすが海原さんである。喫茶店に移動し落ち着くと、彼は鞄の中から写真集を取り出した。彼がずっと撮り続けていた「老上海」が1冊にまとまって中国で出版されたのだ。タイトルは「消逝的老街」http://www.frelax.com/cgilocal/getitem.cgi?db=book&ty=id&id=XSDL229937

昨年、上海美術館で個展を開いたときに、中国の美術出版社の目にとまり出版化されたのだ。10年前のパノラマで撮られた開発が進む前の上海。今ではもうなくなってしまった、古い町並みがそっくり写しとめられている。

写真集にはCDが付属している。彼は写真だけではなく町の音も一緒に記録していたのだ。それを聞きながら写真集を見ると臨場感が増す趣向だ。

海原さんはその後もずっと上海を撮り続けている。一時デジタルカメラに移行していたが、最近ではまたフィルムに戻っている。しかも今撮っているシリーズはシノゴのピンホールだと言うのだ。彼は「もう写んなくていいんだよ。甘いところが写真なんだ」と言う。驚くほど僕と同じことを考えていた。