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海野さんは僕を昨年、一昨年と モンゴルに連れていってくれた人だ。彼は2Bワークショップに3年前参加してくれた。その後グループ展の時にモンゴルの写真を展示している。

海野さんはモンゴルのスペシャリストで、トヨタ財団の支援をうけてモンゴルの調査をしていた。日本の国土の4倍あるモンゴルを隅々まで訪れている。グループ展に出した写真は、調査の合間に撮られた冬のモンゴルの写真だった。

その写真がきっかけで僕はモンゴルへの興味がわいてきた。彼と行った2回のモンゴル旅はエキサイティングで素晴らしいものだった。すべてはモンゴルを知り尽くした海野さんのおかげである。

彼が本格的に写真を始めたのはワークショップの後だから、まだ3年のキャリアだ。しかし昨年始めての個展を再春館ギャラリーで行うと、今年写真集『MARGINAL LAND』を作ってしまった。今回の展示はそれに合わせたものだ。

『MARGINAL LAND』とは生産性のない土地と言う意味だ。写真に人の姿は写っていない。でも生活の痕跡はところどころにある。こんなところにも人は住むのかと驚く。

そして火星のような大地は美しい。何もないというのは美しいものだ。

今回の写真集と写真展は彼の「写真家宣言」ということだ。写真集を作れば写真家になれるわけじゃない。自分が写真を通して、どのように社会と繋がっていくのかがはっきり理解できた時が写真家になる時だ。写真家は職業ではない、生き方だ。

製作過程をずっと見てきた僕は『MARGINAL LAND』に愛着が芽生えてきた。会場正面に展示してあったプリントを1枚購入。全紙で額をつけてもらうことにした。しまっておくにはもったいないからだ。

3度目のモンゴルへ行ってみたくなる写真展だった。