米沢の病院から電話があった。昨日母は脊髄循環の脳外科手術をしている。
近頃急激に記憶障害が始まった母が心配で病院に連れて行ったところ、脳漿に精髄からもれた水がたまり圧迫していると診断された。
循環手術をすることで、もしかしたら記憶障害が改善されるかもしれないということだったので手術をすることにした。手術自体は簡単なものだと説明があった。
手術を終え麻酔から醒めた母は、自分の置かれている状況を把握できす興奮していると看護婦さんから告げられた。
電話に出ると母は怒っていた。「ずっと電話を待っていたのになぜ電話してこないんだ」病院に電話をかけるわけにはいかないんだと説明しても理解できない。僕はずっとあやまり続けた。
本当は昨日は撮影がなくて米沢に行こうと思えばできないことはなかった。それなのに写真集や文庫本を優先してしまったのだ。ずるいことをすると必ず自分に返ってくると散々体験してきたのに相変わらずの自分が情けなかった。
電話口の母は手術前と明らかに変わっていた。なにかに怒りをぶちまける態度を見せたことがなかったのに、自分の思いのたけをぶちまける感じだった。
今まで溜まっていたものが手術をきっかけに噴出したのかもしれない。
妹が近くに住んでいるため全てを任せきりにしてしまっている。電話をしたら妹は明らかに疲れていた。東京で何もしない何もできない僕はどうしようもなくてただ謝っている。
これからどうするのが皆にとって幸せなのか分からないでいる。