風邪ひいたかな。野菜たっぷりのブタシャブ。

今日の撮影は物理学者で「ガイア理論」で知られるジェームズ・ラブロック氏。

緊張の面持ちで迎える我々の前に現れたのは80歳を過ぎた人のよさそうなおじいちゃんだった。セットしてあった椅子を勧め座ってもらうと「笑ったほうがいいかね」とにこやかに微笑んでくれた。

スイートルームには三方向からふんだんに光が差し込んでいたが、一つの窓を残し全ての窓のカーテンを引いた。残った窓にもレースのカーテンを引いて室内にはわずかな光しか入り込んでこない。ファインダーを覗くと薄い光に照らされて彼が浮きあがるように見える。照明はおろか、レフ版すら使わない。ハッセルにモノクロを詰めて撮影を始めた。

ゆっくりあせることなくシャッターを切っていく。ジェームズ氏がどんな功績を残しているかということは今は関係がない。一人の人物として撮る。僕にしてはめずらしく時間をかけて3ロールまわした。

インタビューを終えた後、「一番大切な人」として常に寄り添っている夫人と一緒に、もう一度撮らせてもらう。別れ際二人から握手を求められた。笑顔で去る二人を見て、この撮影がうまくいったとわかりとても嬉しかった。